魔改造で戦車を自作! 真田広之の危険すぎるスタント! 1979年『戦国自衛隊』は製作費11億超のお正月アクション大作!!

『戦国自衛隊』価格:Blu-ray ¥2,000+税発売・販売元:株式会社KADOKAWA

蘇る野球部の記憶……地獄のスパルタ練習inお正月

新しい年を迎え、今年はなんだかあっという間に正月が終わった気がする。正月三が日だけお休みを頂いたのだが、その昔、私は野球少年で、小学校4年生で始めた野球は高校の頃には甲子園を目指し、お盆だろうが正月だろうが、休みなどいっさいなかった。冬休みは私の地元は雪が降るので、グラウンドでの練習ができないことも多く、主に体育館での練習がメインになってくる。この体育館で行われるトレーニングが地獄の始まりだった。

まずは綱登り。体育館の天井からぶら下がっている綱引きに使われる太さの綱を、両手の力だけで上まで登らなければいけない。体力がない頃は、両腕の力だけで登るのがなかなかつらい。棒ならまだしも、綱はグラグラして登りにくいのである。途中でこっそり股に挟んで休もうものなら、下で先輩に綱をぐいぐい揺らされる。今考えると、よく誰も落ちずに済んだものだ。ただ何とか上まで登ったものの力尽き、急いで降りてしまい手のひらが摩擦で火傷のようになるヤツはたまにいた。

次にキツいのが逆立ち歩き。10メートルほど逆立ちで歩くのだが、入部したての頃は、一歩進んじゃ倒れ、一歩進んじゃ倒れの繰り返し。私は逆立ち歩きなんぞ全くできなかったが、えらいもんで3年間やり続けていると、最後にはバレーのコートを一周くらいできるようになっていた。

その他にも人前に出る度胸をつけるという意味で、他の部活も使っている体育館のステージで一人ずつ歌を歌わされる練習もあった。しかし、目立ちたがり屋の私にはこの練習はお手のものだった。みんなが恥ずかしがって短い歌を歌って終わらせるが、私だけはノリノリでザ・ブルーハーツをフルコーラス歌い上げた。そのせいで、この度胸をつける練習には一切指名されず、黙々と綱登りや逆立ち歩きをやらされる羽目になった。

おかげで3年生になった頃には上半身の肩周りから胸にかけて、すっかりゴリラのような体に仕上がっていた。そんな冬の練習も元日だけは休みなのだが、我が野球部の伝統で、雨が降っていようが雪が降っていようが、朝7時に学校に集合して監督の有難い話を聞き、キャプテン以下レギュラーメンバーが今年の抱負を述べ、そして最後にグラウンドに出て、それぞれ自分のポジションにお神酒を撒いて清めるという儀式をやるのだ。「今年はレギュラーになれますように」とか、「エラーをしませんように」とか、「アイツの頭にボールが当たる災いが来ますように……」などなど、それぞれの想いを込めてお神酒を撒くのである。だから元旦も地獄の練習はなくとも休みではなく、グランドには行かなければいけなかった。あの頃を考えたらお正月に三日間も休めるなんて、有り難いことなのだ。

千葉真一芸能生活20周年、JAC発足10周年記念作品『戦国自衛隊』

そんな高校時代の正月の思い出を振り返りながら、今月のオススメ映画は、やっぱり正月映画を推したい。しかも私の好きな戦国映画の中で第1位に君臨する映画、『戦国自衛隊』である。この作品は1979年12月15日に公開された角川映画初の正月映画で、原作が半村良先生、主演が芸能生活20周年の千葉真一さん。さらには千葉さんが作られたジャパンアクションクラブ(通称JAC)の発足10周年記念作品でもあり、アクションシーンは千葉さん自身が監督をなさっている。

この作品を初めて観たのが小学校2年生の頃で、自衛隊員のファッションの格好良さ、戦国武将の荒々しさ、戦車やバズーカなどの兵器の迫力、そして戦いの中にある恐怖や残酷さなど、子供だった私はハートを鷲掴みにされ、この映画の虜になっていった。大人になってから原作小説を読み、田辺節雄氏の漫画版「戦国自衛隊」も読み、DVDやサントラCDも購入。さらにラジオの仕事でこの映画のことを調べる機会があり、様々なエピソードも知ることとなった思い入れの強い作品なのだ。

物語は、千葉真一さん演じる伊庭三尉が率いる陸上自衛隊と海上自衛隊の一部総勢21名が、演習訓練に参加するため新潟県の海岸沿いに集合した際に、補給地ごと戦国時代にタイムスリップしてしまうことから始まる。

戸惑う隊員たちを、なんとか統率する伊庭三尉。そこに地元の戦国武将が襲いかかってくる。狼狽える隊員を抑え、機関銃で応戦する伊庭三尉! 見事に撃退するが、夏木勲(現:夏八木勲)さん演じる長尾景虎が数百名の家臣を従えてやってくる。景虎は友好的で、自衛隊の戦力を長尾軍に組み込みたいと考える。しかし、自衛隊員の中には歴史に介入してはいけないと考える者や、逆に歴史に介入することで昭和の時代に戻れるんじゃないかと言い出す者も。やがて仲間割れを起こし、自衛隊員同士の戦闘を経て、伊庭三尉以下自衛隊員は歴史に介入していく。これは「歴史は俺たちに、なにをさせようとしているのか!」というキャッチコピーを掲げているだけあって、この物語のメインテーマなのだ。

若かりし真田広之擁するJACによる迫力満点のスタントシーン!

今回、私が大好きな名シーンをいくつか挙げてみよう。まずは、やっぱり千葉さん演じる伊庭三尉と夏八木さん演じる長尾景虎が海岸の岩場で、ふんどし一丁で語り合うシーンが良い! 男が男に惚れ込んで、一緒に戦わないかと誘われるのだが、仕上がった褐色の男の肉体美に、白いふんどしがまたよく似合う! このシーンを見てふんどしを履きたくなる男子は多いと思う。

次に、渡瀬恒彦さん演じる矢野隊員との仲間割れによる戦闘シーンで、船に乗っている矢野隊員たちを岩場の陰から狙撃手が狙うのだが、千葉さん演じる伊庭三尉が囮となってヘリからロープで宙吊りになり、マシンガンで撃ち合う。スタントマンなしのJACの真髄が見られる名シーンだ。

その後、矢野隊員たちを倒して船ごと爆破するのだが、仲間を殺さなければいけなかった悔しさを浮かべる伊庭三尉。そこに流れる戦国自衛隊のテーマソングがまた良い! 何度観ても泣いてしまう。

JACならではと言えばいくつかあるのだが、千葉さんの愛弟子・真田広之さん演じる武田勝頼が、低空飛行のヘリに飛び付いて操縦席まで潜り込み二人の乗組員を仕留め、上空から旗指物(はたさしもの:戦場での目印となる旗)を何本も広げた地面にダイブして飛び降りるシーンも、これまた見ものである。

そしてこの作品には何人かの有名スターがチョイ役で出演されているのだが、中でも竜雷太さん演じる木村三曹が戦場で孤立して藪から転げ出たところで、幼い若武者と対峙するシーンに注目。この若武者が、若き日の薬師丸ひろ子さん! 木村三曹はこの若武者を見て「まだ子供じゃないか……」と油断した瞬間、槍でひと突きされてしまう。そして倒れながら「戦国……時代……」と言いながら死んでいくのだ。

この短いセリフの中に、戦国時代とはこんな幼い少年まで戦場に駆り出され、スキあらば命を取りに来るなんて平和な現代の日本では考えられない、まさにここは戦国時代なんだ……という意味が込められた短いセリフなのだと推察する。このシーンも私が大好きなシーンの一つである。

『戦国自衛隊』 価格:Blu-ray ¥2,000+税 発売・販売元:株式会社KADOKAWA

本当の戦争を経験したスゴ腕パイロットがヘリを操縦!

名シーンを挙げたらキリがないのでこの辺にしておくが、最後に撮影時のエピソードも紹介しておこう。本作には自衛隊員数人が隊から離脱して村を襲ったりするシーンがあるため、当時の防衛庁(現・防衛省)が難色を示し、撮影にあたって自衛隊からは一切協力を得られなかった。そのため自衛隊員の衣装は米軍の物を使用していたり、登場する戦車は角川が800万円の費用をかけてブルドーザーを改造して作っている。ちなみに、この戦車は後に宮沢りえさん主演の映画『ぼくらの七日間戦争』(1988年)や私の憧れの番組「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」に使用されたり、TBSドラマ「さとうきび畑の唄」(2003年)では米軍の戦車として登場している。

さらにもう一つ豆知識として、映画の冒頭でタイムスリップした砂浜に、同じく上空でタイムスリップしたヘリが着陸する。そこから降りてきた操縦士の清水二曹が、ちょっと待ってと思うぐらいセリフが棒読みなのだ。これは仕方のないことで、この清水二曹を演じているのは加納正さん。この方は西日本空輸所属のヘリコプター・パイロット。加納さんの操縦技術は当時の日本で5本の指に入るほどで、その卓越した技術を買われて出演なさっているのだ。だから砂浜に着陸するシーンを見直すと、これがま~かっこいい! 映画の中盤、春日山城に見立てた丸岡城(福井県坂井市)の天守閣の横をホバリングで飛んでるシーンなんかも素晴らしい。しかも加納さん、元特攻隊員なのだ! この映画の中で本当の戦場を経験されているのは、加納さんだけなのである。しかし、映画が公開されて約2年後の1981年8月11日、鹿児島県種子島沖の海上で墜落事故が発生し、会社の同僚と搭乗していた加納さんは帰らぬ人となってしまった。

……と、今回は私の『戦国自衛隊』愛をたっぷり書いたが(まだまだ書きたい)、最後はこの大作を手がけた角川春樹氏を筆頭に、演者、スタッフ、製作に携わった全ての方々に「素晴らしい映画を作ってくれてありがとう」と心から感謝を述べて終わりにしよう。

文:桐畑トール(ほたるゲンジ)

『戦国自衛隊』はHuluほか配信中

© ディスカバリー・ジャパン株式会社