唯一の信号機…存続か廃止か 天草市御所浦町

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天草市御所浦支所(右)と御所浦小前の交差点にある町唯一の信号機=同市

 熊本県天草市御所浦町が、町内に一つだけ設置されている信号機の存続をめぐり揺れている。合理化のため廃止の検討を始めた県警に対し、一部住民からは存続を求める声が上がる。ただ、通行車両が少なく信号を無視する歩行者が後を絶たない現状もあり、存続は“黄信号”だ。

 信号機があるのは県道333号と臨港道路が交わる市御所浦支所と御所浦小前の交差点。昨年12月下旬、歩行者信号が「赤」の時に、1人の高齢女性が横断歩道をさっさと渡っていった。その後も、わずか数分の間に、数人が小走りで赤信号を渡った。

 信号機は「押しボタン式」で、設置は旧御所浦町時代の2000年。毎春、天草署などが小学1年対象の交通安全教室を開く場所でもある。ただ、横断歩道は約5メートルと道幅が狭く、交通量や歩行者も少ないため署は昨年9月、廃止検討の対象として、市に通知した。

 県警が信号機の合理化を進める背景には、交通環境の変化に伴い、信号機の費用対効果も変わってきていることが挙げられる。警察庁も16年、信号機の設置や撤去に関する方針を各都道府県警に通達している。

 県警交通規制課によると、県内の信号機は20年3月現在で2834基で、電気代は1台当たり年間8千円~2万円。維持費を含めた19年度の年間費用は約4億7500万円だった。現在、約3割の信号機を対象に、標識に代えることなどが可能かどうかを検討しているという。

 一方、御所浦町では信号機存続を求める声が上がる。まちづくり協議会の森惠慈会長(73)は「生活の中で信号機に触れる機会がなくなってしまう」と危ぶむ。昨年9月には、協議会や天草地区交通安全協会御所浦部会など5団体が、連名で存続を求める要望書を署に提出した。御所浦小の木村純一校長は「通学路でもあり、生活文化として残してほしい」という。

 署や市支所は現在、利用状況の確認を続けている。署交通課の中園貴博課長は「信号機がどうなるか見通せないが、それ以前に交通ルールを守らない大人の姿を子どもたちには見せられない。信号がある以上、きちんとボタンを押して安全に渡ってほしい」と呼び掛けている。(米本充宏)