東京五輪へ「自分を超える」　新年に決意新た、空手・形の清水

　東京五輪の空手・形女子で金メダルを狙う清水希容（ミキハウス）が２度目の五輪イヤーに当たっての思いを語った。（聞き手、共同通信＝村形勘樹）

　―新年はどのように迎えたか。

　大みそかは家族で過ごした。新型コロナウイルス感染が広がっていたので、初詣にも行かずに元旦から自宅で稽古を始めた。東京五輪までのあと半年で、どこまで自分は変われるか。そういう思いを強く持って、日々取り組んでいる。

　―２０２１年のテーマは。

　年始は毎年心を整理して自分自身に言い聞かせるために、１年のテーマを立てて書き出している。今年は「集大成」「有言実行」「今の自分を超える」といった言葉が並んだ。ありきたりなことだが、大事にしたい。書いたものは、毎晩手を合わせる自宅の仏壇に置いている。

　―昨年１２月１３日の全日本選手権では決勝で敗れ、連覇が７で途切れた。

　「東京五輪まで、もしかしたらこれが最後の試合かもしれない」「国内では絶対に負けられない」という重圧をかけ過ぎていた。大会の２週間前くらいから不安や怖さが頭を離れない悪循環に陥った。精神状態がもろに演武に出てしまい、すごく後悔している。

　―試合間隔が空いた影響もあったのか。

　昨年までの敗戦や、コロナ禍で人前で演武する機会が減ったことなど、いろんな要因が蓄積されたのだと思う。

　―元々注目を浴びる舞台は好きだった。

　それが自分の強さ。でも、ここ１、２年は国際大会で負けるようになり、試合に出るのが怖くなることがあった。全日本では「自分を見てほしい」とか「思い切りやろう」という気持ちよりも「安全に、ミスしないように」と演武し、自分の良さを殺してしまった。

　―萎縮ということか。

　１９年に判定が旗から採点方式に変わって、動作が減点対象になるかどうかが見られるようになった。減点されないようにという考えにとらわれていた。ただ、五輪前に気付けたことは良かった。五輪本番では本当に自分らしい形を打てるようにしたい。

　―改善法は。

　今までは小手先で技を出す傾向があったので、もっと体全体で表現するようにしたい。あとは自分の特徴のスピード。誰にもまねできないくらいの速さを生み出せるよう鍛錬していく。

　―全日本の後は家族とどんな話をしたか。

　試合後、宿舎で両親に「あんな演武は見たくなかった。何も伝わってこなかった」と怒られた。約１年ぶりの試合だったのに、楽しめない自分が本当に腹立たしかった。結果以前に、自分らしい形を表現するという初心に戻った。

　―同じ日には、柔道男子６６キロ級の五輪代表決定戦があった。

　私と同じミキハウス所属の丸山城志郎選手は阿部一二三選手（パーク２４）に負けてしまったが、「力尽きるまで闘う」「絶対引かない」という心の強さは、勝負の世界で、絶対に必要なもの。簡単にまねできることではないが、活を入れられた。

　―当面の練習計画は。

　五輪だけに集中しようと思っている。国際大会の予定は不透明で、それに振り回されるよりは、ぶっつけ本番で五輪という気持ちでいる。今、海外に出ると、帰国後２週間の自主隔離があり、その間思うように稽古できない方が痛い。大会に出て調整したい思いもあるけど、ぶれないように毎日を送りたい。

　―感染状況が悪化し、五輪開催が危ぶまれている。

　拠点にしている大阪や東京で緊急事態宣言が再発令され、五輪開催を巡る状況は複雑になってきた。空手は２４年パリ五輪の実施競技から外れ、先がない。本当に開催を願っているが、それは周りの人が決めること。後悔するのが一番嫌なので、私は全てを懸けて万全の準備をするだけ。

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　清水　希容（しみず・きよう）空手・形女子の東京五輪代表。小学３年で空手を始め、世界選手権は１４、１６年に優勝、１８年は２位。全日本選手権は１３年から７連覇。アジア大会は１４、１８年に制した。東大阪大敬愛高、関大出。ミキハウス。１６０センチ、５６キロ。１９９３年１２月生まれ。大阪府出身。