キャンプイン目前!選手の本音を聞いてみた メジャー式日程の導入望む声も

昨年まで“当たり前”だったキャンプの光景は大きく様変わりする

【広瀬真徳 球界こぼれ話】あと1週間ほどでプロ野球の春季キャンプが始まる。例年であればこの時期、球界関係者は「いよいよか」と気持ちが高まるものだが、今年に限って言えばそんな雰囲気はない。

新型コロナウイルス感染拡大が止まらない厳戒下。球団に携わる関係者の多くは不安が先行するようで、あるパ・リーグの球団職員も「今年は様々な制約がある中でのキャンプになる。とにかく無事に終わってくれればいい」と渋い表情。「昨年のロッテのように選手、関係者が一人でも規律を乱して新型コロナの感染拡大を起こせば、球界だけでなくキャンプ地の医療機関にも迷惑をかけてしまう。すでに球団からは夜間の外出禁止を徹底するよう通達が来ていますし、ルールを破った場合は容赦なく処分されるようですから。みんな戦々恐々です」と浮かれた様子はみじんもない。

選手をサポートする関係者がこの状態なのだから、プレーする選手の緊迫感は相当なもの。ある選手に聞くと「(春季キャンプを)予定通り行えるのはうれしいですが、正直なところ、今年は少し遅めのスタートでもいいのでは…という声が仲間うちで広がっていた」と本音をこう続けた。

「キャンプ序盤というのは、あくまで体の状態を上げるための期間。新人は別でしょうが2~3年プロを経験している選手であれば各自調整の仕方は把握している。だからこそ、今年は緊急事態宣言が解除される予定の2月中旬ごろから全体練習を始めるぐらいでよかったのでは…という意見が多かった。個々で調整した方が感染するリスクも低いですし。そういった判断を球界全体でなぜできなかったのか。そのへんが悔やまれます」

米国のやり方をまねる必要はないが、メジャーの春季キャンプは通常、2月中旬にまず投手と捕手の「バッテリー組」がスタート。その後、少し遅れて2月下旬に野手組が合流する分割方式だ。野手に関しては日本と比べおよそ1か月遅いキャンプインになるものの、この日程で「調整期間が足りない」と不満を漏らす者はいない。現在は日米ともに深刻な新型コロナ禍の状況下である。今年ぐらいは前記選手の思いと同様、日本球界もメジャー式の日程などを取り入れるべきだったのではないか。

巨人などの一部球団ではキャンプ初日から主力組を中心に「分割キャンプ」を行うが、大半は例年通りの日程消化を予定する。不安や緊張感を拭い切れない現場の選手や関係者たち。野球ができる喜びの裏で悲痛な叫びがあることも忘れてはならない。

☆ひろせ・まさのり 1973年、愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。

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