スターリン体制下の濃密な日常、謎めいた研究装置も『DAU. ナターシャ』日本版予告

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映画『DAU. ナターシャ』場面写真(C)PHENOMEN FILMS

旧ソ連のスターリン体制下で生きる人々を描き、第70回ベルリン映画祭で銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞した映画『DAU. ナターシャ』より、日本版予告編が解禁された。

本作では、ソ連の秘密研究都市にあるカフェで働くウエートレス、ナターシャの目を通し、独裁の圧制のもとでたくましく生きる人々と、美しくもわい雑なソ連の秘密研究都市の様子を描く。そして、当時の政権や権力がいかに人々を抑圧し、統制したのか、その実態と構造をつまびらかにし、その圧倒的な力にほんろうされる人間の姿を生々しく捉えていく。

ロシアの奇才イリヤ・フルジャノフスキーによる「ソ連全体主義」の社会を完全に再現する前代未聞のプロジェクトは、実にオーディション人数約40万人、衣装4万着、欧州史上最大の1万2千平米のセット、主要キャスト400人、エキストラ1万人、撮影期間40ヵ月、35mmフィルム撮影のフッテージ700時間、撮影ピリオドごとに異なる時間軸……莫大な費用と15年もの歳月をかけたもので、本作は、その膨大なフッテージから創出された映画化第一弾となる。

ソ連の某地にある秘密研究所。その施設では多くの科学者たちが軍事的な研究を続けていた。施設に併設された食堂で働くウェイトレスのナターシャはある日、研究所に滞在していたフランス人科学者と肉体関係を結ぶ。言葉も通じないが、惹かれ合う2人。しかし、そこには当局からの監視の目が光っていた…。

日本版予告編では、スターリン体制下の1952年というパラレル世界に送り込まれた人々の、あまりにも濃密な日常が映し出される。

秘密研究所に併設された食堂の責任者として働くウエートレスのナターシャの慌ただしそうな“昼間”の姿は、夜に閉店すると一変、同僚ウエートレスのオーリャと店内の食糧をさかなに夜な夜な気だるくお酒を飲みかわす。ナターシャはオーリャに対して、上司としての優越性だけでなく、娘ほどに年の離れた若い女性への複雑な感情など、抱える思いは単純ではない。

そんな姿をはじめ、研究所に関わる人達が繰り広げる異常なまでにハイテンションなうたげの様子、ナターシャが高名な科学者リュックと繰り広げる濃厚なラブシーン、謎めいた研究装置、歩くのもおぼつかないほどに酩酊(めいてい)したオーリャ、全てに嫌気がさしブチ切れるナターシャの様子など、この都市に生きる人々の生々しい姿が切り出されている。

本作の監督のひとりで「DAU」プロジェクトの責任者でもあるイリヤ・フルジャノフスキーは「私はユダヤ人の家系です。母はウクライナ出身で、故郷のユダヤ人は全員殺害されました。もし母が戦争の初めの頃に逃げていなかったら、私は今ここに座っていなかったでしょう」と明かした上、同プロジェクトに取り組んだ理由について、「ソヴィエト連邦以降の世界には、犠牲者または加害者、あるいはその両方がいない家族は存在しません。それこそがソヴィエトのトラウマです。ソヴィエトが残した病は記憶喪失です。誰もが覚えておきたいことだけを覚えています。この記憶喪失を克服しない限り、それは何度も何度も繰り返されます」と語っている。

映画『DAU. ナターシャ』は2月27日より全国公開。