【動画】平戸・川内峠 丘陵に広がる草原

大正、昭和期の歌人もその景観をたたえた川内峠一帯。北側には平戸のシンボル、平戸大橋や平戸城も望める=平戸市

 平戸市の観光シンボル、平戸大橋から約5キロの標高約260メートルの丘陵に約30ヘクタールの草原が広がる。北九十九島、五島列島北部、壱岐島などの島々が浮かぶ海原と、平戸島の山並みのコントラストを望むことができる。春はツツジが咲き誇り、秋はススキが一帯を覆う。
 「山きよく海うるはしとたたえつつ旅人われや平戸よくみむ」。大正、昭和期を代表する歌人、吉井勇が絶景をこう詠んだ。峠の駐車場にその歌碑がある。
 かやぶきの住宅が一般的だったかつて、屋根のふき替えに欠かせないカヤの産地だった峠一帯。農耕牛の放牧場でもあり、麓の農家が連れてきた牛が朝から夕方まで放されていた。
 峠では毎年2月、野焼きがあり、春を告げる炎に包まれる。防火や若草の育成のため、周辺の木引町、大野町、大山町、川内町の住民や消防団員ら百数十人が取り組む伝統の行事だ。
 約20年間にわたって野焼きに携わり、本年度、大野町森林組合長を務める宮本圭二さん(60)は「父親(89)は子どものころから野焼きをしていた。若い世代に引き継ぎたい」と語った。


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