女性が働きやすい職場づくり SDGsに取り組む企業 専用スペース、子連れ出勤導入

成瀬さんの妊娠を機に設けられた女性専用スペース。今は板で囲っている=長崎市柳谷町、原口電気

 最近耳にする機会が増えた「SDGs」。「サステーナブル デベロプメント ゴールズ」(持続可能な開発目標)の略で、「誰一人取り残さない」多様性と包摂性のある社会の実現に向け、国連が2030年までに達成すべき17分野の国際目標を定めている。だが長崎県民の認知度は34%と、いまひとつ浸透していない。女性が働きやすい職場づくりに取り組んでいる長崎市の電気工事業「原口電気」を訪ねた。
 同社は住吉地区の繁華街から少し離れた斜面に3階建ての社屋を構える。2階が総務・営業フロアで、3人の女性が働いている。うち入社13年目の成瀬佳奈子さん(35)は約3年前に第1子となる娘を出産。「妊娠してつわりがひどく、最初は出勤しても会社の車の中で休んでいた」と言う。
 原口誠社長(44)によると、電気工事の会社なので男性が多く、自身を含め17人の社員のうち14人が男性。01年に父から会社を継いだ後、出産・子育て世代の女性はいなかったという。相談を受けた原口社長は2階フロアに2畳ほどの女性専用スペースを作った。カーテンで囲い外から見えないよう配慮した。成瀬さんは「きつくなったらすぐに横になることができて、かなり助かった」と話す。
 成瀬さんは育休を経て約1年後に職場復帰。娘は保育所に預けたが、微熱があれば元気でも登園できない。急いで片付けなければならない仕事があるときは午前中だけでも出勤したい。原口社長は「カンガルー出勤(子連れ出勤)」を認め、成瀬さんは「毎日子連れだとなかなか仕事にならないが、いざというときに困らない」と言う。
 「出産したら子育てが大事なので辞めようと思っていた。でも育児が落ち着いて仕事をしたいと思っても正社員の職が見つかるかどうか不安で、働き続けたい気持ちもあった」と成瀬さん。育児をしながら働ける環境を整えてもらい「会社に貢献できるようもっと頑張ろうと思うようになった」と笑顔で話す。
 原口社長は1年前に女性社員を1人増やし、3人体制にした。残業はなく、休みを取りやすくなったという。「彼女たちは社の財産。10年勤めた人が辞めれば社にとってマイナス。一緒に歩み続けてもらうためにはどうすれば良いか考えた」と話し、「SDGsは特別なことではない。会社を経営し、社員とその家族の生活を守り、みんなが満足できる職場にすることが既にSDGs」と主張する。
 一方、成瀬さんには気になることがある。育児との両立が難しく会社を辞めたり正社員からパートになったりする友人が少なくないという。「友人が正社員でいられるよう、中小企業でもできる取り組みが広がってほしい」と願っている。

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