門松みゆきがコロナ禍の中見つけた生きる道――『花の命』では“大人の愛”を歌ったロマンチック歌謡に挑戦

天を衝くような伸びやかな歌声で人気を集める門松みゆきが、デビュー3年目を迎えた2021年1月27日に3枚目のシングル『花の命』をリリース。演歌調だった過去2作とは変わって、今作はしっとりと歌い上げるバラード歌謡。門松みゆきの新しい魅力を発信しようと意気込む彼女に、新曲にかける思い、コロナ禍で考えたことなど、縦横に語ってもらった。

やっと藤竜之介先生の楽曲をいただけた“藤ワールド”全開の歌謡曲

――なかなかコロナが収束しないこの時期に、あえて新曲を発売されたのはどんな考えからでしょう。

「コロナで歌い手としての活動ができない分、新しい何かをファンの皆さんに提供しなくてはいけないと思っていました。本当はライブやイベントができればいいんですが、今はそれもかなわないので、それなら皆さんに自宅にいても楽しんでいただけるようにと新曲をリリースさせていただきました」

――今回はこれまでの2曲と違って歌謡曲。女の生き様を花に例えたドラマチックな曲ですが、お聴きになった第一印象はいかがでしたか。

「一番最初に思ったのは、3曲目にしてやっと藤竜之介先生の楽曲をいただけたなということ。もちろん『みちのく望郷歌』も『浜木綿しぐれ』も藤先生が手掛けてくださった曲ですが、これまでの2作は、門松みゆきの魅力が際立つようにと考えてくださった曲でした。私の得意な“張り歌”だったり“うなり節”だったり、いわばド演歌です。それに対して今回は“藤ワールド”。先生の世界観が詰め込まれた曲だと思います。

――初めての歌謡曲ということで、表現するのに苦労したのではないですか。

「歌謡曲の場合はこぶしも入れられないし、装飾をはずして歌わなくてはならない。私はずっとド演歌で育ってきたので、難しかったですね。細かいテクニックが使えない分、ごまかしがきかなくて、歌のスキルやクオリティが直球で求められる曲だと思いました。(自分の得意な)装飾をいっさいはずしてしまうことで、じゃあどうしたら自分の色を出せるのかということを、すごく考えました。ただ、生意気ですが、さすが師匠って思ったのは、私の得意な音域を活かして、ここは低音で語るように歌った方が説得力が出る、サビはグッと歌い上げるなど、メリハリをつけることによって人の心をしっかりつかむような作りになっていること。ステキな曲になっていると思います」

――曲もですが、歌は詞の世界観も大切な要素です。一人の男性を思い続ける芯の強い女性の姿を花に例えて描いていますが、その点でどう歌おうと思いましたか。

「作詞をしてくださった石原信一先生は、“どんな人にも通じる深い愛の歌”だとおっしゃっていました。ここで歌われている“花”は聴く人によって想像する形も色も違うと思うんです。「あなたと生きて花になる」っていう歌詞も、一見ピュアな女性の気持ちを歌っているとも思えますが、もしかしたら“これで最期になるかもしれない”から「あなたと生きて花になる」んだと考えると全然違った歌になりますよね。そういう風に聴く人の価値観や人生観でとらえ方が変わる曲だと思ったので、歌うときは余白を大事にしました。『花の命』はこういう歌だって決めつけないで、皆さんがそれぞれ想像しやすいように、ニュートラルな立ち位置で歌うように心がけています」

――師匠の藤先生からは、何か歌唱のアドバイスがありましたか。

「とにかく“言葉をていねいに、大切に歌いなさい”と言われました。“マイクを好きな男性の耳元だと思って歌うように”とも。そうすれば例えば“好きです”って歌うのも、まさか大声で“好きです――っ

”とは歌いませんよね。ささやくように、優しく歌うはずです。そのようなことを一つひとつ丁寧に歌唱指導していただきました。ですので、男性のファンの皆さんは(主人公の女性を)自分の恋人だと思って聴いてほしいです。
私自身も、直接ファンの方々とお会いできない状況だからこそ、歌の中で聴いてくださる一人ひとりに寄り添えたらと思って歌っています。だから皆さんも、自分のために歌っているんだって思いながら聴いていただけるとうれしいです」

『フランチェスカの鐘』に『東京ブギウギ』、はたまた地元・小田原の歌『小田原小唄』とカップリングも充実

――カップリングは、古関裕而先生の『フランチェスカの鐘』と服部良一先生の『東京ブギウギ』です。二大巨頭の名曲が入っていますね。

『フランチェスカの鐘』は、自粛期間中にツイッターで日本コロムビアのアーティストの歌つなぎの企画があって、その時私が歌ったのがこの曲でした。皆さんが“(門松に)合うね”“いいね”っておっしゃってくださったのと、“門松のカバーした名曲が聴きたい”という声もいただいていたので、入れることにしました。ただ、『東京ブギウギ』は苦労しました。この曲はご存じのように明るい曲ですが、私の声のトーンが低いので、明るく歌っているつもりでも声の雰囲気で曲が暗くなってしまって。冗談ですが、“テンション上げたいので、ビール持ってきて!”なんて言ってたくらい(笑)。いつになくレコーディングも時間がかかって悪戦苦闘しました」

――そしてもう1曲は、門松さんが「勝手に小田原観光大使」をなさっている故郷・小田原の歌、『小田原小唄』。どんな曲なんでしょう。

小田原の盆踊りの定番ソング。私も小さいころから聴いてきた曲です。今回、リニューアルして歌わせていただいたんですが、歌ってみて改めてこんなことを歌っていたんだって分かったんです。というのも、地元の盆踊りのときにかかる『小田原小唄』は、何年も前から使っているテープで流すので、ボロボロなんです。何て歌っているのかぜんぜん分からない(笑)。今回歌わせていただいて、かまぼこや小田原城、梅、御幸の浜などなど、小田原の名所や名産が歌われている、これぞザ・小田原という曲だと分かりました。しかも作詞は石本美由起先生、作曲が遠藤実先生という大メジャーなお二人がお作りになっていて、それもびっくり! 勝手に小田原観光大使としては、皆さんにこの曲を聴いていただいて、小田原のことをもっともっと知ってほしいと思っています」

コロナ禍の中、改めて決まった覚悟

――ところで、このコロナ禍が始まって、そろそろ1年。自粛期間中は、どんなことを考えていましたか。

「自分と向き合う時間が長かった分、本当にいろんなことを考えてしまって。歌う場所がない、歌えないってなったときに、“じゃあ、私、他に何ができるんだろう”って考えたら、何もできないということに気づいたんです。歌う以外何もできない私は、誰の何の力にもなれないんだと思ったら切なくなってしまったこともありました。でも、悩みながらも少しずつ“私には歌があるじゃないか”って考えられるようになったんです。歌を極めていくことが私の使命、自分は歌で皆さんに元気や力をお届けできる存在なんだって思ったら、逆に自分に自信が持てた。10年も修業して、何度もオーディションに落ちて、やっと一握りの人しか勝ち取れないデビューという場所に漕ぎつけたのだから、この10年を無駄にしないで歌を極めていこうと改めて思いました。“私の生きていく道はここなんだ”って、覚悟が決まった感じです」

――そんな門松さんがこれから目指していくのは、どんな場所ですか。

「私は小さいころから北島三郎さん細川たかしさんが大好きでした。お二人とも演歌歌手というジャンルで語られますが、私の中ではエンターテイナー。ご自分の世界を持っていて、老若男女を問わず愛されていて、国民的なスターというイメージでずっと見てきました。私が歌手を目指したのは、子どものころに見に行ったコンサートの帰りに、お客さんで来ていたおじいちゃんやおばあちゃんが、“元気をもらった。これでまた一年頑張れる”ってキラキラした笑顔で話しているのを聞いて感動したからなんです。北島さんや細川さんのステージを見ると、まさにその存在感、パワーが多くの方々を元気づけている。歌やエンタテインメントって一度にたくさんの人を幸せにできるんだなって気づかせてくれます。今、私は、歌を通じてお客様とつながりたいという気持ちがすごく強いんです。それには演歌、歌謡曲をもっと極めて、歌手としての基盤をしっかり作っていきたいと思っています」

――まだまだコロナは収束しそうもありませんが、今年はどんな目標を立てていますか。

「今、自分にできることを精一杯やることしかないですね。インターネットサイン会やSNSもそのひとつ。もちろんファンの中でも参加できる方は限られていますが、何か動かなきゃいけないですものね。私も超アナログ人間で、ネットのこととか、よく分からないんですが、私も勉強していきますので、皆さんもついてきてくださいって感じでしょうか(笑)。でも、今後も新しいことにはチャレンジしていくつもりです。
あとは家で歌の勉強です。歌って、こう歌いたいと頭では思っているのに、声に出すと違うってことが結構あって、だから出来なかったことを克服できるように、延々と同じ練習をやり続けるんです。結局、楽しいんですよ、歌うことが。出来ないことが出来たりすると、“あっ、この歌い方、別の曲にも応用できるな”とか考えてうれしくなっちゃう。だから歌の勉強はぜんぜん、苦にはなりません。最初、藤先生の弟子に入ったときに、先生が“歌は急に階段を登る”っておっしゃっられたんです。何のことかと思ったら、(歌の勉強は)紙を一枚一枚、貼っていく作業と同じで、ある程度の厚みにならなければ次のステップにはいけないということでした。今はその意味がよく分かります。練習って、プラスにしかならない作業なので、これからも頑張っていきたいと思います。私には歌しかありません。だからそこを極めなくて、何を極めるんだ、何を勉強するんだって思うんです。歌を極めること、それが私の生きがいなんだと思います

リリース情報

2021年1月27日(水)発売
3rdシングル『花の命』
COCA-17829¥1,227+税

配信リンク:https://VA.lnk.to/HananoI

<収録曲>
1.花の命(作詩:石原信一 作曲:藤竜之介 編曲:西村真吾)
2.フランチェスカの鐘 (作詩:菊田一夫 作曲:古関裕而 編曲:西村真吾)
3.東京ブギウギ 作詩:鈴木勝 作曲:服部良一 編曲:西村真吾)
4.小田原小唄(石本美由起/遠藤実/未定)
5.花の命 オリジナル・カラオケ
6.フランチェスカの鐘 オリジナル・カラオケ
7.東京ブギウギ オリジナル・カラオケ
8.小田原小唄 オリジナル・カラオケ

© チャンネル銀河(株)