【大相撲】マンネリ&ファン離れで近づく〝冬の時代〟 3月の大阪開催断念で東京5場所連続

昨年の3月場所は無観客ながら大阪で行われた

角界が新型コロナウイルスの影響で、さらなる苦境に立たされている。日本相撲協会はコロナ禍を考慮して大相撲3月場所(3月14日初日)を例年の大阪ではなく、東京へ会場を変更して開催することを決定(観客上限は約5000人)。地方場所は丸1年開催できず、昨年7月場所から5場所連続で東京開催が続いている。地方場所の中断が続くことによる〝負のスパイラル〟も顕在化しつつあり、協会の経営に大打撃を与えかねない状況だ。

日本相撲協会が3月場所の大阪開催を断念した理由は多岐にわたる。約1000人に及ぶ協会員の移動に伴う感染リスクに加え、東京出発前と大阪到着後に少なくともPCR検査が2回必要になることや、会場の大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)では、東京・両国国技館と同レベルの感染対策は困難と判断。また、体調不良者が出た場合の検査体制が確立されおらず、入院先の確保が見通せない点なども考慮された。

芝田山広報部長(58=元横綱大乃国)は「準備するリミット、今の感染状況、会場、宿舎の感染対策などが積み重なり、今年は難しいということになった」と説明した。相撲協会にとっても「苦渋の決断」だ。昨年の3月場所はコロナ禍のため、大阪で史上初の無観客開催。7月の名古屋、11月の九州(福岡)は国技館で代替開催となった。

次の3月を合わせれば、東京での本場所は5場所連続。東京のファンは本場所過多による「マンネリ化」、地方のファンは本場所消滅による「相撲離れ」と〝負のスパイラル〟に陥ることが危ぐされていたが、現実のものとなりつつある。実際、直近の初場所では政府の緊急事態宣言下であることを割り引いて見ても、特に平日は寂しい入りが目立っていた。

こうした事情もあり、このところの相撲協会は〝多角経営〟に躍起になっている。昨年12月からは公式ユーチューブチャンネル「大相撲アーカイブ場所」を開設。月額990円の料金で協会が所蔵する過去の取組映像などを順次公開している。昨年のヒット商品となった「国技館カレー」に続き、今月からは「国技館ハヤシ」(レトルトタイプ、1食400円)を新発売。相撲協会は2020年度で約55億円の赤字が見込まれる中、こうした動きは危機感の裏返しとの見方もできる。

今回の決定を受けて、親方衆の一人も「今度の大阪(3月場所)は地方場所再開の〝第一歩〟になるはずだった。これでは名古屋と九州の見通しも立たない。まだしばらくは耐える時期が続く」と落胆の色を隠し切れない様子。コロナ禍前までは「満員御礼」続きだった大相撲は本格的な〝冬の時代〟に突入しそうな雲行きだ。

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