ジャン・アレジ「私には息子にチームを買ってあげることはできない」巨額の資金が必須なF1を問題視

 ジュリアーノ・アレジがフェラーリの若手ドライバー育成プログラム『フェラーリ・ドライバー・アカデミー』(FDA)での最後の活動としてF1マシンでの初走行を行い、その場面を、父親で元F1ドライバーのジャン・アレジが見守った。アレジSr.はフェラーリに対して深い感謝の気持ちを示した。

 フェラーリは今週、フィオラノにおいて5日間にわたるテストを実施、2018年型SF71Hで7人のドライバーを走らせている。初日1月25日の朝、アレジは自身にとって初めてとなるF1カーでの走行を行った後、FDAに別れを告げた。2016年にFDAに加入し、2019年から2年間FIA-F2に参戦したアレジだが、思うような成績を残せなかった。

 ジュリアーノがF1テストを行ったフィオラノは、ジャンが約30年前にスクーデリアでの初テストを行った場所だった。アレジSr.はティレル、フェラーリ、ベネトン、ザウバー、プロスト、ジョーダンでF1に参戦した経験を持ち、フェラーリには1991年から1995年に所属した。

2021年1月フィオラノでのフェラーリF1テストに参加したジュリアーノ・アレジ

「彼(ジュリアーノ)が数回のランを済ませた後、私はピットエリアから出て行き、コース脇で彼の走りを見ることにした。彼がピットに戻って来るたびに気を散らすようなことはしたくなかったのだ」とアレジSr.は語った。

「残念ながらとても気温が低く、時折雪がちらつくほどだったが、ひとりでコース脇に立って息子の走りを見ていた。彼がフェラーリで走る姿を見るのは喜びだった。いつまでもこのシーンを忘れることはないだろう」

2021年1月フィオラノでのフェラーリF1テストに参加したジュリアーノ・アレジ

 アレジSr.は、ジュリアーノは2021年には日本でレース活動を行う予定であると語り、それは彼にとって「重要なステップになる」との考えを示している。

 F1についてジャン・アレジは、大きな財力がなければチャンスをつかむことができない世界であるとし、若いドライバーがステップアップするためにはFDAのようなシステムが必要であると語った。

「息子をグランプリに出場させるためにF1チームを購入する父親もいるが、私にはそれはできない。今の時代、スポンサーシップを見つけるのは極めて難しい」

「今はかつてないほどに金が大きな要素になっている。息子のためにチームを買う人々もいる。(セルジオ・)ペレスは去年F1でランキング4位を獲得し、スポンサーシップとして1500万ユーロ(約20億円)を持ち込むことができるドライバーであるにもかかわらず、シート喪失の危機にさらされた。(チャンピオンのルイス・)ハミルトンですら、彼にふさわしい契約を確保することができずにいるようだ」

「才能と速さがあるだけではF1でシートを見つけることはできないので、若いドライバーたちをサポートするために何らかの行為が必要になってくる。(トト・)ウォルフや(フレデリック・)バスールが築いた組織のメンバーにならなければ、チャンスはないのだ」

「私たちはフェラーリがジュリアーノにこの素晴らしいチャンスを与えてくれたことに感謝している。ミック・シューマッハーも同様だ。フェラーリの助けがなければ、彼はF2でタイトルを獲ることも、F1に昇格することもできなかっただろう。FDAは資金を持たない若手ドライバーたちをサポートしてくれている。彼らには心から感謝している」

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