ルクレールを上回るタイムを残したサインツJr.。エンジニアとの良好な関係にフェラーリF1上層部も感銘

 カルロス・サインツJr.のフェラーリデビューは、彼にとってこれ以上ないものだった。フィオラノのテストコースで行われた1日半のテストで160周を超える走行をしてすぐにペースを発揮し、チームメイトのシャルル・ルクレールがまさに同じシャシーで前日に出したタイムに並び、それを上回ったのだ。

 ルクレールがドバイでの休暇中に新型コロナウイルスに感染し、モナコの自宅で自主隔離に入っていた一方で、サインツJr.はマラネロで2週間を過ごしてチームとシミュレーター作業を行い、初めてのテストのために準備を整えた。2018年型マシン『SF71H』での初日の走行で、サインツJr.は57秒台前半という速いタイムを出し、ルクレールがその日の早い時間に達成したラップタイムに並んだ。

 28日(木)の午前中、サインツJr.は56秒65という素晴らしい記録を出してベストタイムを更新した。フェラーリがピレリのデモタイヤを使用していることを考慮すると、これは非常に優れた記録だ。レギュレーションにより、デモタイヤは通常のレースタイヤと比べてはるかに硬いのだ。フィオラノの非公式トラックレコードは、今もミハエル・シューマッハーが出したものであることは、覚えておいてもいいだろう。ブリヂストンのソフトタイヤを履いたV10のフェラーリF2004で、彼は56秒を下回る55秒999を記録した唯一のドライバーだ。

2021年1月フィオラノでのフェラーリF1テストに参加したカルロス・サインツJr.(2018年型SF71H)

 水曜日のデビューで印象強いラップタイムを刻んだサインツJr.は、フィオラノのトラック周辺に数多くのファンと“ティフォシ”を引きつけた。サインツJr.が常にチームに近いところにいるためにイタリアに住まいを移したことや、彼が流暢なイタリア語を話すこと、またイタリアの文化を吸収したいという強い願いを持っていることに、イタリア人は喜んでいる。そしてそのことは、平日のマラネロに普段では考えられないほどの数のファンが集まったことにも表れている。

 ラップタイム以上にフェラーリの上層部が感銘を受けたのは、サインツJr.のエンジニアと仕事をする能力だ。彼はすでにベッテルのレースエンジニアを6年務めたリカルド・アダミや他のチームスタッフと良好な協力関係を築いている。

 サインツJr.はまた、フェラーリ・ドライバー・アカデミー(FDA)で技術面の運営を担当しているマルコ・マタッサがコースにいることを喜んだ。マタッサは2015年にトロロッソでサインツJr.がF1デビューしたときのレースエンジニアだった。彼は5日間の集中テストの間に若手のミック・シューマッハー、カラム・アイロット、マーカス・アームストロング、ジュリアーノ・アレジの全員に、チームがコースに用意した2台のSF71Hのうち1台をドライブさせるためのサポートも行っていた。

2021年1月フィオラノでのフェラーリF1テストに参加したカルロス・サインツJr.
フィオラノで2018年型マシン『SF71H』をドライブしたカルロス・サインツJr.
フィオラノで2018年型マシン『SF71H』をドライブしたカルロス・サインツJr.

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