元モーターベースのロリー・ブッチャーがトヨタに移籍。2台体制初年度のエースに/BTCC

 BTCCイギリス・ツーリングカー選手権で2019年にインディペンデント・クラスのタイトルを獲得しているロリー・ブッチャーが、今季から2台体制へと拡張するトヨタ陣営のSpeedworks Motorsport(スピードワークス・モータースポーツ/SWM)に移籍。TOYOTA GAZOO Racing UK・ウィズ・ギンスターズのエースとして、トヨタ・カローラBTCCのステアリングを握ることが発表された。

 また、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でフル参戦を見合わせていたPower Maxed Racing(パワー・マックス・レーシング/PMR)が、レギュラー活動の再開を決断。53歳の大ベテランでBTCCの顔でもある、“悪童”ことジェイソン・プラトもシリーズ復帰の見込みとなった。

 現地法人トヨタGBのファクトリー支援を取り付け、2020年はTOYOTA GAZOO Racing(TGR)として戦ってきたSWMだが、この2021年シーズンを前に、長年1台体制で孤軍奮闘してきた盟友トム・イングラムのチーム離脱をアナウンスしていた。

 そのイングラムに代わって、こちらもシリーズ復帰組のサム・スメルトとともにSWM加入が決まったブッチャーは、2019年にCobra Sport AmD AutoAid/RCIB Insurance(コブラスポーツAmDオートエイド/RCIBインシュアランス)のFK2型ホンダ・シビック・タイプRで、自身初のインディペンデント王者を獲得している。

 翌年には新型の第4世代フォード・フォーカスSTを投入したMotorbase Performance(モーターベース・パフォーマンス)に移籍し、リードドライバーとしてチーム躍進の原動力に。ここまでキャリア通算6勝を誇るスター候補生は、いよいよファクトリー体制でシリーズ総合のタイトル獲得を目指す環境を整えた。

「もちろん、僕自身もこの新しい挑戦にとても興奮しているよ」と、新たなシーズンへの意気込みを語ったブッチャー。

「BTCCに昇格して以来、メーカーが支援するチームに移ることが僕の目標だった。これが真に、チャンピオンシップのために戦う絶好のチャンスになることは間違いないからね」

「TOYOTA GAZOO Racing UKのカラーを身に纏って戦うことは誇りであり、最高の栄誉だ。昨年末の時点でトヨタは間違いなくグリッド上で最速モデルの1台であり、フォードで戦った経験からしても、あのカローラはバラストの有無に関わらず最高のハンドリングを備えているように見えた」

「だからこそ、早くシートに座って自分の手でステアリングを握り、そのフィールを味わうのが待ちきれない気分だよ! シーズンではポイント獲得がすべてで、表彰台や勝利はボーナスのようなものだ。このクルマなら、その最前線で戦えない理由が見当たらないね」

2年連続でドライバーズランキング5位を記録したロリー・ブッチャー(左)と、サム・スメルトのSWM加入が発表された
2019年はFK2型ホンダ・シビック・タイプR、昨季は第4世代フォード・フォーカスSTと、毎年ごとに愛機をスイッチする形となる

■「100勝目に向け準備ができている」とプラト

 一方、2018年にはそのブッチャーとチームメイトを務めた経歴を持つスメルトは、2019年に一旦シリーズを離れてブリティッシュGT選手権を戦っていたが、その際に所属していたのがSWMであり、今回はその活躍が認められてのBTCC復帰となった。

「BTCCにカムバックできて心からワクワクしている。2018年のデビューイヤーは大いに洗礼を受けたけど、今はその頃よりはるかに高い能力があることを示す決意だよ」と、24歳のスメルト。

 一方、ボクスホールのファクトリーチームとして活動してきたPMRは、COVID-19による計画変更で2020年はイベントごとにゲストドライバーを起用する散発的な体制でシリーズを過ごしてきた。

 そのプラン変更時点で2021年復帰時のドライバーとして確約されていた、2度のドライバーズチャンピオン経験者であるプラトは、通算97勝を挙げたキャリアの続きを始めるとともに、参戦600戦目のメモリアル達成を目前に控え「心に火が灯った。今は100勝目に向け準備ができている」と、モチベーションの高さをアピールした。

「明らかに、2020年は我々ドライバーの多くにとって理想的とは言えない状況だったが、幸運な側面として家族と多くの時間を共有できた。でも、今はツーリングカーに戻るべき時が来た。レースをしない時間が長いと、自分がそれをどれほど愛し、感謝しているかを再認識し、チームが本当に恋しくなった」と語るプラト。

 チームは2020年を前に、2台目のボクスホール・アストラBTCCにマット・ジャクソンの起用を発表していたが、2021年に向けての候補者は改めてアナウンスするとしている。

 また、ホンダのファクトリー支援チームであるTeam Dynamics(チーム・ダイナミクス)製のFK8型ホンダ・シビック・タイプRを走らせるBTCレーシングは、これまで搭載してきた“ニール・ブラウン”チューンのK20C型から、シリーズオーガナイザーであるTOCAが用意したSwindon Powertrain(スウィンドン・パワートレイン)製の共通エンジンに換装するとしている。

53歳の大ベテランでBTCCの顔でもある“悪童”こと、ジェイソン・プラトもシリーズ復帰へ
2021年はTOCA共通エンジンへのスイッチを決断したBTCレーシング。2022年からはHV対応として、新たにMスポーツ製共通エンジンのシリーズ供給も決まっている

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