河北春秋(1/30):国語の教科書にかつて載っていたフランスの…

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 国語の教科書にかつて載っていたフランスの作家ドーデの『最後の授業』は、言語と国家の問題を考えさせる。物語はアルザス地方のフランス語教育が終わりを告げる日の先生と少年の交流を描いている▼「民族が奴隷になっても母国語を保っていれば、牢獄の鍵を握っているようなもの」。作中のアメル先生が生徒らにこう語り掛ける。戦争に負けたフランスに代わって、ドイツによる教育が始まってもフランス語を忘れるなと先生▼あくまでフィクションとしてのこの感動的な物語は、言語が国家支配の重要な手段であることを印象深く読者に訴えている。使い慣れた母語を排除し、別の言語を押し付けるのは、歴史的にも植民地支配の常とう手段と言えるだろう▼中国が内モンゴル自治区で中国語教育を強化し始めた。漢語を母語に指定して授業も漢語に切り替えたという。「このままではモンゴル語が失われてしまう」と自治区出身の日本の大相撲の力士たちも、危機感をあらわにしている▼新疆ウイグルでの弾圧を米国はジェノサイド(大量虐殺)と認定した。内モンゴル自治区もいつそうなるか。ドーデの物語では、少年は「今にハトまでドイツ語で鳴かなくてはならなくなるの」と心配する。モンゴルの子どもたちもまた不安に違いない。(2021.1・30)