「核爆発かと思った」北朝鮮で起きた”ベイルート級”巨大事故

昨年8月、レバノンの首都・ベイルートで発生した大爆発事故は、今なお記憶に新しい。核爆発かと見まがう煙を空高く巻き上げた事故の原因は、倉庫に積まれた大量の硝酸アンモニウムだったと言われる。

実は北朝鮮でも、これと同様の事故が起きている。平安北道(ピョンアンブクト)の龍川(リョンチョン)で2004年4月、これが大爆発して8000棟の建物が吹き飛び、1500人が死傷する悪夢のような惨事が発生したのだ。

被害規模から言っても、事故発生時の様相はベイルートと同様のものだった可能性がある。

北朝鮮は不満分子の反発を警戒して、そして何よりも最高指導者の身辺の安全を図るため、危険物の扱いは厳重に規制されている。ところがそれでも、こうした大規模な事故が繰り返し起きている。

中でも語り草になっているのが、慈江道(チャガンド)の江界(カンゲ)で1991年に起きたミサイル工場の爆発事故だ。1000人規模の死者が発生したとされるこの事故は、当時、北朝鮮にいた人の間では有名な話だが、海外ではあまり知られていない。爆発のあまりの凄まじさに、住民は敵国からミサイルで攻撃されたものと思ったという。

朝鮮日報は以前、咸興(ハムン)出身のキム・スンチョル氏の証言を引用し、1979年に起きた北朝鮮史上最大と言われる爆発事故について伝えている。火薬を積んだ貨物列車5両が爆発し、3000人が犠牲になったという。

そして、脱北者で東亜日報記者のチュ・ソンハ氏は最近、自身のYouTubeチャンネルとブログで、北朝鮮海軍で起きた事故の情報を伝えている。

1983年10月、黄海南道(ファンヘナムド)のクァイル郡で起きたとされる事故で、ロメオ級潜水艦に搭載する総薬量が数百キロに達する魚雷を数百発も保管した倉庫が大爆発したというものだ。爆発によって生じたキノコ雲は高さ200メートルにも達し、目撃者は「核爆発が起きたのかと思った」と証言したという。

チュ・ソンハ氏は「ベイルートの爆発事故と同規模の爆発音と衝撃波が辺りを包んだ」と書いている。

ちなみに、この件は純然たる「事故」とは言い難い。ある兵士が故意に爆発を起こしたという。その経緯については改めてレポートするが、ともかく、北朝鮮では大型事故が繰り返し起きている。そのような事故にいつか、最高指導者が巻き込まれる可能性がゼロであるとは、誰も言い切れないだろう。

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