まるで七つ子? 恒星「トラピスト1」を周回する7惑星はどれもほぼ同じ組成か

赤色矮星TRAPPIST-1(左端)を周回する7つの系外惑星と地球(天秤の右側)を比較する研究を表したイメージ図(Credit: NASA/JPL-Caltech)

ワシントン大学のEric Agol氏らの研究グループは、「みずがめ座」の方向およそ40光年先にある恒星「TRAPPIST-1(トラピスト1)」を周回する7つの太陽系外惑星に関する最新の研究成果を発表しました。研究グループによると、岩石質の惑星とガスが豊富な惑星が4つずつ存在する太陽系とは異なり、TRAPPIST-1の系外惑星は7つともほぼ同じ組成を持つ岩石惑星のようです。

■従来よりも正確な7惑星の平均密度はほぼ同じだった

TRAPPIST-1は直径が太陽の約11パーセント、質量が太陽の約8パーセントと小さな赤色矮星で、地上の望遠鏡やアメリカ航空宇宙局(NASA)の赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」(2020年1月運用終了)の観測により全部で7つの系外惑星が見つかっています。今回研究グループは運用終了前のスピッツァーの観測によって得られたTRAPPIST-1の1000時間以上に及ぶ観測データなどを使い、7つの系外惑星それぞれのこれまでで最も正確な平均密度を算出しました。

系外惑星の性質を知る上で、直径と質量から算出される平均密度は重要な情報です。たとえば、同じ大きさで見た目もそっくりなボールが2つあるとしましょう。材料は片方がで、もう片方はです。眺めるだけでは材料の見分けがつかなくても持ってみればどちらのほうが重いかわかりますし、直径と質量から平均密度を割り出せば材料を推定することもできます。

系外惑星も同様で、平均密度がわかればその惑星が地球と木星のどちらに似ているのかを区別したり、どのような組成が考えられるのかを推定したりすることができるようになります。研究グループが惑星の自重による密度の変化を差し引いて分析したところ、TRAPPIST-1を周回する7つの系外惑星の平均密度はどれもほぼ同じであることが明らかになったといいます。

TRAPPIST-1の7惑星(上段)と太陽系の4つの岩石惑星(下段)の比較表。数値は上から公転周期、主星からの距離、半径、質量、平均密度、表面重力の順。単位は公転周期が「日」、主星からの距離が「天文単位」、半径/質量/平均密度/表面重力は「地球を1とした場合の比率」(Credit: NASA/JPL-Caltech)

■7惑星の組成は地球とは異なるとみられる

いっぽう、TRAPPIST-1の7惑星の平均密度は地球と比べて約8パーセント低く、地球とは異なる組成を持つとみられています。可能性の一つは鉄の量の違いで、地球の鉄は全体の約32パーセントを占めるのに対し、TRAPPIST-1の7惑星では約21パーセントと少なく、中心部分の鉄でできた核(コア)のサイズが比較的小さいことが考えられるといいます。

別の可能性として、火星の地表に存在する赤っぽい酸化鉄(サビ)のように、大量の鉄が酸素と結びついた酸化鉄として存在するために平均密度が低いことも考えられるといいます。酸化鉄のみで低密度を説明するには鉄でできた核が存在せずにすべての鉄が酸化していなければならないようですが、Agol氏は2つの仮説を合わせた「全体的に鉄が少なく、一部が酸化している」可能性が高いとしています。

また、酸化鉄よりも低密度なが地球よりも高い比率(質量全体の約5パーセント)で地表に液体として存在する可能性も検討されていますが、7惑星それぞれの平均密度がほぼ一致するような量の水が偶然存在することはありそうにないとして、Agol氏は水が主な理由である可能性は低いと考えています。

今回の研究に参加したチューリッヒ大学のCaroline Dorn氏は「夜空は惑星に満ちていますが、人類がその謎を解き明かし始めてからまだ30年も経っていません。1つの惑星系で岩石惑星の多様性を学べるTRAPPIST-1は魅力的な研究対象です」とコメントしています。

TRAPPIST-1の7惑星で想定された内部の様子を示した図。左から「核が存在しない」「マントルと小さめの核」「深い海に覆われたマントルと大きめの核(外側の4惑星のみ)」(Credit: NASA/JPL-Caltech)

関連:赤色矮星TRAPPIST-1の7つの系外惑星、形成から現在まで軌道が乱されていない模様

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA / ベルン大学
文/松村武宏

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