論文不正発覚、先進医療の臨床研究中止 国循・阪大発表

 国立循環器病研究センターと大阪大は30日、当時所属していた研究者の医師らが発表した論文2本に捏造/改ざんがあったと発表した。そのうちの論文1つは進行中の臨床研究の根拠論文であったことから、研究を進めていた阪大は臨床研究の中止も合わせて決定した。

同一研究者が関わった論文2本の不正を認定 累計7本の不正が明るみに

 国立循環器病研究センターと大阪大は30日午後会見を開き、昨年に続いて、それぞれに所属していた元国立循環器病センター生化学部ペプチド創薬研究室長の野尻崇氏が関わっていた論文のうち2本に、意図的な不正(捏造/改ざん)が認められたと発表した。

 今回不正が認められたのは、国立循環器病センター生化学部ペプチド創薬研究室の野尻崇元室長が関わっていた論文2本。いずれも肺がん手術の際に、既存の心臓病治療薬であるホルモン「hANP」を使用すると転移をおさえられる可能性を示唆する研究論文だった。

 調査の結果、委員会は2本について意図的な不正、すなわち捏造と改ざんを認定した。具体的には、論文内で示された図表の根拠となるデータの由来が不明で、さらに反映されるべきデータの一部が除かれた上で解析されていたという。野尻氏は委員会の聴取に対し、故意ではないとして不正を認めていないが、これらの論文の責任著者として名を連ねている寒川賢治元国循研究所長は調査結果を受け、論文取り下げを検討している。

また、今回不正が認定された論文のうち1つは、現在全国10病院が参加している臨床研究(リンク:阪大による臨床研究説明のPDF)開始の根拠となった論文であるため、阪大では会見で被験者に謝罪するとともに研究中止を決定した。

 同氏をめぐっては昨年8月にも研究不正を告発され、関わった論文5本について今回と同様に捏造と改ざんが認定されている。

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