<社説>離島県沖縄とコロナ 医療崩壊回避に全力を

 新型コロナ感染症の拡大が収まらず、離島県沖縄が医療崩壊の危機を迎えている。宮古島市では高齢者施設などでクラスター(集団感染)が発生し、県医師会は患者の選別をせざるを得ない瀬戸際だと警鐘を鳴らす。命を救う態勢を早急に立て直す必要がある。

 冬は感染が増えると予想されていたが、政府の消費刺激策「Go To キャンペーン」の停止は遅れ、人の往来は抑えきれなかった。政府は2020年度の新型コロナ対策予備費で残る約3兆8千億円を含め、国費を早急に医療の充実に充てるべきだ。

 島の医療崩壊を回避するためにあらゆる手だてを講じなければならない。

 沖縄県は人口10万人当たりの1週間の新規感染率が42.11人となり、49.43人の東京都に次いで全国2位となった。年始以降に増加し、成人の日を含む3連休の後、さらに拡大した。特に深刻なのは宮古島市だ。1週間の新規感染率は261.78人に上る。小さな島で爆発的な感染が起きている。

 宮古圏域の中核病院の県立宮古病院は新型コロナ患者を受け入れ病床が満床となったため一般外来を休止した。民間医療機関も入院患者を受け入れているが、それでも足りず、クラスターが発生した高齢者施設の感染者は施設内で療養し、行き先が決まらず自宅待機になっている感染者もいる。

 もともと医療体制のぜい弱な島で感染が起きたらどうなるか。宮古島市の事例は沖縄のみならず全国の離島、過疎地域にとって人ごとではない。外来診療が休止となり、他の病気の人も医療を受けられない。

 離島での感染は宮古島市だけではない。昨年12月には伊平屋村で大規模な感染が発生した。島外から来た感染者が立ち寄った飲食店を通じ感染が広がったとみられるが、島には入院治療できる医療機関がなく、患者は本島に搬送された。

 政府は県の要請に応じて陸自の看護官を宮古島市へ派遣したが、さらに人的医療支援を厚くしなければならない。

 第3次補正予算案に盛り込んだ経済対策のうち、新型コロナの拡大防止策は約2割に過ぎない。残りは「Go To」や脱炭素社会実現に向けた基金創設などに重点配分されている。これらが「不要不急」とまでは言わないが、緊急性があるのは医療現場だ。

 同時に県民も感染を広げないよう、改めて自戒しないといけない。今年に入り帰省や会食の機会があった。新成人のクラスターも起きた。宮古島市長選では県外からの来島者に加え、両陣営とも飲食を許容していた。コロナ禍の長期化による「慣れ」が油断につながってはいないか。

 最も恐れていた「命の選別」に陥る事態は絶対に避けなければならない。国も県も全力で患者の受け皿を増やしてほしい。

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