<社説>具商センバツ初出場 地域一丸の成果を誇ろう

 具志川商業高校野球部に関わる全ての人を祝福する。学校、地域が一丸となって勝ち得た成果だ。大いに誇ってほしい。

 3月19日に甲子園球場で開幕する第93回選抜高校野球大会(センバツ)に、21世紀枠で具志川商が選ばれた。センバツへの出場は県勢として6年ぶり、21世紀枠での選出は20年ぶりとなる。コロナ禍の中、久しぶりに県民に笑顔を与えてくれた。

 まずたたえられるべきは選手たちだ。昨年11月の九州大会は4強入りこそ逃したものの、準々決勝では準優勝した福岡大大濠(福岡)に0―3の惜敗だった。

 4強入りした各チームと実力的には紙一重である。成長著しい投手陣に加え、機動力を生かした攻撃というチームカラーを高校野球の聖地でも存分に発揮してほしい。

 今回、具志川商が選出された理由の一つには学校行事をはじめ部員がリーダー的な役割を果たしていることへの評価がある。

 具志川商といえば、毎年恒例となっている「具商デパート」が知られている。模擬株式会社を設立し、生徒が出資して運営する。仕入れから販売まで全て生徒が担当し、年によっては売り上げが1千万円に達する。

 野球部前主将の安田風太さんは「専務」を務めた。来年度の「社長」には、好守でチームをもり立てる二塁手・島袋大地さんが就任する。役員以外でも多くの部員が重要な役割を担うという。

 デパート運営を通して得たものは多い。「相手を思いやる気持ち」「難しいことから逃げない」。全力で取り組む日々の積み重ねがグラウンドでの結果につながっている。

 もう一つの選出理由は地域の支援によってチーム力が大きく伸びたことだ。

 高校野球熱が高い沖縄では有望選手が集う私立、公立の強豪校がしのぎを削る。その中で地元の生徒中心に甲子園を目指すのは簡単ではない。

 具志川商も5年前には部員不足で、他の部活動から選手を借りて試合をするほど活動が低迷した。

 窮状の中でも生徒を支え、導いたのが喜舎場正太監督ら同校の卒業生だ。

 単に野球を強くする指導ではない。喜舎場監督はグラウンド、学校生活、家庭の三つを同じように頑張ることで力が発揮できると説いたという。

 生徒が力を伸ばす環境をOBら地域の大人たちがつくったのだ。高校野球をはじめとする部活動が、教育の一環であるという原点を再確認する好例といえよう。

 地域に支えられたという意味では、21世紀枠最初の選出校、宜野座を思い出す。

 センバツ4強に進んだ宜野座の快進撃は、21世紀枠が実力でも全国の強豪に劣らないことを証明してみせた。

 具志川商ナインにも可能性は十分にある。春に吹く「具商旋風」を県民は待っている。

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