WTCR:ドイツ出身のハルダー兄妹が世界戦進出。シリーズはバイオ燃料も採用へ

 複数年にわたってFK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRで戦ってきたドイツ出身のドライバー、マイクとミシェルのハルダー兄妹は、2021年のWTCR世界ツーリングカー・カップへのステップアップを計画していることを明かし、2020年のTCRヨーロッパ挑戦からわずか1年で世界戦へのチャレンジを決断した。また、WTCRは今季からP1 Racing Fuels(P1レーシング・フューエルズ)と2年契約を結び、15%のバイオ燃料を導入するとアナウンスしている。

 現在24歳の兄マイク・ハルダーは、2017年にTCRドイツでドライバーズランキング2位を獲得したのを最上位に例年タイトル争いを繰り広げ、3歳年下の妹ミシェル・ハルダーとともに、家族経営の組織“Team Halder(チーム・ハルダー)”でTCR規定ツーリングカーのシリーズを戦ってきた。

 新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受けた2020年も、ふたりは地元ドイツ・シリーズで開幕のときを迎えていたが、同イベントでペナルティ裁定を巡ってオーガナイザーと対立した兄マイクがシリーズからの撤退を決断。そのまま妹ミシェルも兄の意思に従う形で、WTCRへの昇格を狙うドライバーたちが集うTCRヨーロッパへと主戦場を移した経緯があった。

 そのTCRヨーロッパでは、Profi Car Team Halder(プロフィ・カー・チーム・ハルダー)としてエントリーした妹のミシェルが大活躍を演じ、ベルギー・ゾルダーでの第2戦でシリーズの歴史に名を刻む初代女性ウイナーの称号を獲得した。

 WTCRへのステップアップに必要な資金を確保するため、スポンサー活動を現在進行形で継続しているというハルダー兄妹だが、彼らの参戦が実現すればジュニアドライバータイトルに加えて、インディペンデント・トロフィー、そして1戦につき年間登録の女性ドライバー3名がエントリーしている場合にのみ有効という条件は付くものの、ミシェルは2021年に導入されるFIA WTCR女性ドライバータイトルの候補として走ることになる。

「私たちの目標は、WTCRで兄と一緒にシーズン全体を通してドライブすること」と語った、TCRドイツでの優勝経験も持つミシェル。

現在24歳の兄マイク・ハルダーは、2017年にTCRドイツでランキング2位を獲得。3歳年下の妹ミシェルとともに”Team Halder(チーム・ハルダー)”でWTCR進出を狙う
ミシェル・ハルダーは、2020年TCRヨーロッパ第2戦で、ダン・ロイドらを抑えて初代女性ウイナーの称号を獲得した

■将来的な目標は100%バイオ燃料の供給

「現時点ではCOVID-19がスポンサーシップに影響を与えているため困難な状況ではあるけれど、現在その問題解決に取り組んでいて、無事2021年のWTCRに参加できることを願っている」と続けたミシェル。

「WTCRにエントリーできたら夢の実現になる。なぜなら、世界最高のツーリングカードライバーたちと対戦することは本当に本当に、素晴らしいことだから!」

 現時点でカレンダーに名を連ねている8つのイベントのうち、ふたつのトラックで走行経験があるミシェルだが、シリーズフル参戦が決まった場合も「2021年は学習のシーズンになる」と考えている。

「知らないトラックがたくさんあるから、1年を通じて学びの季節になるでしょうね。それでも大きな進歩を遂げ、できるだけ多くの経験を積むことができればと思っている」

 直前のスケジュール改訂で、2021年の開幕戦は6月のドイツ・ニュルブルクリンクに変更されたが、マイクとミシェルにとってノルドシュライフェは勝手知ったるトラックであり、世界的な名声と難攻不落の伝説を持つ全長25.378kmのコースについて充分な知識を有している。

「それはそれは素晴らしいトラックよ。もちろん、私たちが知っている場所でドライブし、世界戦デビューを飾れるのは素晴らしいことね。だからこそ、私たちがその場に居ることが可能になるよう願っているわ」

 一方、1月29日付でWTCRの公式燃料サプライヤー契約を締結したP1レーシング・フューエルズは、2021年シーズンから15%の再生可能成分を含む燃料を導入する予定だ。

「この契約は、WTCRにバイオ燃料を導入するため定義したロードマップに記されているように、シリーズで100%持続可能な燃料を使用するための重要な第一歩になる」と語るのは、FIAでツーリングカー・コミッション理事を務めるアラン・ゴウ。

「彼らP1レーシング・フューエルズは、WTCR向けの特注燃料を完成させただけでなく、継続的なコスト削減策の一環として限られた予算内での供給を実現してくれた。シリーズのエキサイティングな新時代に向け、トラックでの高い性能と経験豊富で信頼できるパートナーの支援を引き続き期待している」

 この15%の非化石燃料ベースはバイオエタノールに由来し、P1レーシング・フューエルズとして将来的には100%のバイオ燃料供給を目指していくという。

「知らないトラックがたくさんあるから、1年を通じて学びの季節になるでしょうね」とミシェル
1月29日付でWTCRの公式燃料サプライヤー契約を締結したP1 Racing Fuelsがバイオ燃料を供給する

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