鷹が更なる常勝軍団になるために… 城島健司氏が担う“王イズム”のマニュアル化とは?

ソフトバンク・城島健司球団会長付特別アドバイザー【写真:代表撮影】

城島氏が掲げるホークスとしての「マニュアル」作り

今季、2年連続のリーグ優勝と5年連続の日本一を狙うパ・リーグ王者ソフトバンク。昨季は巨人のV9以来となる4年連続日本一を成し遂げ、その連覇街道をさらに伸ばすために更なる改革を目指している。

10年、20年、さらにその先も常勝軍団で居続けるために何をするべきか。そこで大きな責務を担うことになるのが、昨季から会長付き特別アドバイザーに就任した城島健司氏。球界最高の捕手として、現役時代には王貞治球団会長、工藤公康監督、小久保裕紀ヘッドコーチらと共にチームの礎を築いてきた城島氏が、その構想について語った。

4年連続で日本のプロ野球の頂点に立ったホークス。他球団を凌駕する強さを示し続けているが、球団の視線、城島氏の視線は遥か先に向いていた。自身の役割について「なぜホークスが強いのか、ファンの人に愛されているのかは中に入ってみないと分からない。逆にいうと、その部分をより強いものにしないといけない、未来に残していかないといけない。今の組織が終わったら終わりじゃなく、未来の人が形として見えるものを残していかないといけない。それがホークスの宝になる。そのお手伝いができれば」と語る。

城島アドバイザーが掲げるのは常勝軍団として築き上げてきたメソッド、マニュアルを未来永劫、形あるものとして球団に残すことだと言う。今年は王会長の監督時代に共に戦った工藤監督、小久保ヘッド、そして城島氏と中心選手がチームに揃うことになった。

「どういう風にしてホークスを作ってきたか、強くなってきたか」

「戦友というか一緒の時代を戦ってきた人がこのホークスを率いている。それもホークスの強さの1つだと思う。王会長が築き上げたホークスをみんなが受け継いでいっている。10年後、20年後の人が、どういう風にしてホークスを作ってきたか、強くなってきたか、選手にどういう育成方法をしてきたのか、を目を通して見られるような組織を作っていこうという、そういう仕事をしています」

ダイエーホークスとして誕生し、福岡を本拠地として今季が23年目。その強さを築き上げてきたのは、まだ弱かった頃の1995年からチームを監督として率い、退任後も会長として球団を牽引してきた王会長に他ならない。その王会長の薫陶を受けてきた城島アドバイザーはこうも語る。

「このチームはダイエーホークスになって歴史が浅い。そのほとんどで、王さんが弱い時代から作ってきた。王さんの考え方、王さんが残してきたもの、王さんの野球に対しての考え方というのをマニュアル化したい。それがホークスの戦い方だっていうのをずっと思っていた」

今年、小久保氏がヘッドコーチに就任したことでより一層、チーム内の“王イズム”は濃くなる。

「それが昨年よりも強いものになるということですね。工藤さんも、小久保ヘッドも、僕も直に感じているワケですから」

ソフトバンク・小久保裕紀1軍ヘッドコーチ(左)と城島健司球団会長付特別アドバイザー【写真:代表撮影】

「マニュアル化して、球団の宝として残していきたいという風に思ってます」

城島氏が例として挙げたのが、球界最高の打者となった柳田悠岐外野手の存在だ。「20年後、柳田は現役じゃないわけじゃないですか。でも、柳田にどういう指導をして、こういう選手になったのか、逆にこういう風にしたら伸びなかった、というのも、今後、育成していく上でホークスの宝になると思う」。選手育成における成功、失敗を形として残し、後世に繋げていくということだ。

今や常勝軍団となったソフトバンクではあるが、こういったメソッドの蓄積は行われてこなかったという。それはNPBの他球団でも同様だと城島氏は言う。1人の監督が在任時には継承されていても、監督が変われば、それは失われる。城島氏の言う“球団としての宝”として、蓄積されていないことを課題に感じていた。

「形として残ってないわけですよね。どの球団も現実だと思う。僕らはマニュアル化して、球団の宝として残していきたいという風に思ってます」という城島氏。メジャーリーグ時代の経験も語った上で「全てメジャーが良いというわけではないですけど、メジャーの方が歴史があるし、1球団が抱えてる選手の数が多いのは確かなんですよね。日本も1軍、2軍しかなかったのが、3軍ができて抱える選手が多くなってきて『共有』が大事になるんですね。そういうのも含めて今のプロ野球の先頭を走っているので、それを未来に残したいと考えています」

城島氏が考えるのはグラウンド内のことだけにとどまらない。外国人補強やドラフトに向けた新戦力のスカウティング活動など、編成面を含むフロントでも、メソッドの構築、ノウハウのマニュアル化を目指す。そこにも城島アドバイザーがメジャー経験を注入する。

マニュアル構築の舵取り役に「労力が1番いるのって歯車が動く時」

「現場だけの話じゃない。現場だけで野球をやるワケじゃない。素晴らしいフロント陣、素晴らしいスカウト、こういうものにもはっきりしたマニュアルがあれば、ホークス独自のスカウティングもできる。スカウト業務にも足を踏み入れますし、アメリカでやっていたこともあるので外国人の調査だったり、施設だったり、教育だったり、マイナーリーグの育成ってことに関しても意見を問われたり、言ったりしている」

球団としての“ホークスメソッド”の構築。城島アドバイザーは「組織って事を起こそうとすると、すごく労力がいるんですよ。不平や不満もあると思う。ただ、動き出したら納得してくれる。労力が1番いるのって歯車が動く時なんですよね」と語り、自らが先頭に立って、その“歯車”を動かしにかかるという。

「小久保さんの相談を受けないといけないかもしれないですね、小久保さんも中間管理職ですから。副社長は大変なんじゃないかな、と。小久保さんの愚痴も聞かないといけないのかな。契約に入ってない仕事なんで、その時は球団から別途(報酬を)もらいたいと思います」

こう冗談、笑いも交えつつ自身の役割について語った城島アドバイザーだが、その言葉の端々に覚悟、熱意が滲んでいた。ソフトバンクホークスがさらなる常勝軍団になるために――。城島アドバイザーが舵取り役となり、新たな施策を進めていく。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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