田中、浅村、岸、則本…楽天・石井監督が侍ジャパン大量選出歓迎のワケ

右回りに田中、岸、則本、浅村

大量選出はむしろ大歓迎か。楽天・石井一久GM兼監督(47)が3日、キャンプの視察に訪れた侍ジャパン・稲葉篤紀と対面。今夏に行われる予定の東京五輪での金メダル獲得に向け「全面支援」を約束した。楽天には先日チームへの電撃加入が決まった田中将大投手(32)や浅村栄斗内野手(30)ら多数の日本代表候補が在籍している。選手の大量選出となれば石井監督が目指す悲願の日本一に向けリスクが高まりかねないが、指揮官はそんな不安を一掃。「売り込み」までして自軍から大量の選手を日本代表に送り込みたい意向を示したが、その真意とは…。

まさかまさかの大奮発、いや大盤振る舞いと言っていいだろう。石井監督が侍ジャパンへの全面支援を確約した。「できるだけうちのチームの選手を選んでくださいね、と言いました」。この日、キャンプ地の視察に訪れた稲葉監督との対面後の会見。石井監督は迷わずこう言い切った。

「色々と協力できることもある。何でも言ってください、という話も(稲葉監督には)しました」

終始笑顔ではあったものの、決して冗談や社交辞令ではない。08年北京五輪での惨敗から13年。自国開催の東京五輪で野球日本代表の「金メダル」は国民の悲願ともいえる。そんな大舞台に惜しみない全面支援を公言。選手を預かる稲葉監督もこの石井監督の男気には感謝しかないだろう。
楽天には現在、今夏の五輪日本代表候補がズラリと名を連ねる。先月末、電撃的に8年ぶりの古巣復帰を果たした田中将を筆頭に、侍ジャパンの中軸を期待される浅村。他にも先発の岸や則本昂、今季抑えに再転向する松井もいる。ここに石井監督はドラ1左腕・早川の加入も惜しまないと言う。

通常、プロ野球の球団は野球世界一を決めるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)や五輪など世界大会への選手派遣には細心の注意をはかる。大舞台に自軍の主力選手を送り出せばその分、選手が故障して帰還したり、大会後の不調リスクがあるからだ。

今季、楽天は石井監督のもと13年以来8年ぶりの日本一を至上命題に掲げている。五輪期間中はプロ野球が一時中断されるとはいえ、自軍のことを最優先に考えれば主力選手の大量派遣はむしろ消極的になっても不思議ではない。にも関わらずなぜ石井監督はあえて積極的なのか。背景には「逆転の発想」が見え隠れする。

確かに日の丸を背負う舞台に主力選手を大量に送り込めば故障リスクは高まる。だがその反面、仮に大舞台で活躍すればその選手のメンタル面や技量を成長させる効果が計り知れない。その後の野球人生への自信や自負にも繋がるだろう。

石井監督は選手にそうしたメリットを五輪で享受してもらい、その後一回り大きくなって自軍に貢献して貰いたい。特にここ2年で計20勝と伸び悩む則本昂。昨季先発転向が失敗に終わり、今季抑えに再転向する松井にはそんな思いがあるはず。会見で「(大舞台での)経験が財産になり(個々の)ポテンシャルが上がると思うので。いっぱいいい経験をしてほしい」と力強く語ったのはこうした親心の表れとも言える。

積極派遣で自軍選手が活気づけば、最終的に悲願の日本一に近づくことも考えられる。日米をまたにかけた指揮官にネガティブな発想はない。

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