ワーク・ライフ・バランスに優れたスウェーデンから子育てを楽しむヒントを学ぶ

「ラーゴム(ちょうどいい)」な生活を送るための北欧のライフスタイルを紹介する本連載。今回は共働き夫婦が多い中で出生率も高いスウェーデンで、子育てを楽しむヒントを探ってみました。仕事と子育てをバランスさせるには、親のがんばりだけではなくさまざまな大人や子どもとの協力関係も鍵となるようです。

仕事と子育てをどうバランスするのか

北欧諸国は子育てをしやすい国といわれています。米企業「Asher & Lyric」や雑誌「U.S. News & World Report」が発表した2020年度のランキングで上位を占めています。中でもスウェーデンは出生率が向上したことで近年注目されてきました。政府機関「Statistics Sweden」によると2000年初頭に年間90,000人だった出生数は、6年前に年間115,000人に伸びており、2020年も引き続き横ばいをキープしています。

家庭環境をみてみると、専業主婦/主夫の割合は少なく数パーセントにとどまり、17歳以下の未成年の子どもを育てる家庭のほとんどは共働きです(注1)。そのため、誰しもが仕事と子育てのバランスを保ち、両立しながら生活しています。

注1)スウェーデン政府機関「Statistics Sweden(※英語)」サイト内によると、2019年のデータで17歳以下の子どもをもつ人のうち、職業をもたない割合は女性が6%、男性が4%となっています。また

仕事や子育てから離れてリフレッシュする空間も多い

そのバランスを支えるひとつとして、社会保障制度の充実が挙げられます。スウェーデンでは国民負担率が50%を超えており、消費税も25%と税率の高さはあります。その対価として子育てに関しては、夫婦で最大480日間の有給の育児休暇が取得できたり、子どもの教育費や医療費の負担はゼロです(注2)。不妊治療のプログラムも手厚く、出産しやすい環境づくりもおこなっています。

注2)より詳しい情報は、スウェーデン政府機関「Försäkringskassan」サイト内の子育てに関する社会保障内容(※英語)をご覧ください。

働きながら子どもを育てたいと考えるとき、制度面での不安が少ないことは大きな機会です。しかし、それだけが子育てしやすい理由というわけではなさそうです。ホストファミリーや友人たちも、多い家庭では4人の子どもを育てながら、仕事では夫婦ともに活躍しています。

彼らの日常生活を見ていると、国の制度に支えてもらうだけではなく、家族と周囲も巻き込みながら子育てを楽しんでいるように感じました。キーワードとなるのは「チームワーク」。いろいろな場面で子育てサポートチームを構成していました。

今回も私にとって一番身近で、最も長く時間を過ごしたホストファミリーを例にとって紹介します。

送り迎えや子守は家族間コミュニティの役割

日本と同じくスウェーデンでも、幼稚園の送り迎えは親の役目です。みんな共働きなので、両親のうちいずれかが通勤途中に子どもを送り、帰宅時に迎えにいきます。ホストファミリーの場合、毎朝の見送りは主に父親の仕事です。7:30頃には家を出て、1.5km離れた幼稚園まで歩いていきます。

あるとき、ホストの子どもが通園する時間に一緒に出かけました。すると、近くに住む親戚の子どもと待ち合わせており、少しするとさらに別の家族の子どももやってきました。子どもたちの年齢が近く同じ幼稚園に通っているため、親同士で持ち回りで担当しているとのこと。

お迎えも予定の合う親が担当し、親が仕事などの場合には誰かの家で預かります。遅くなるときは夜ご飯を一緒に食べたり、いとこ同士はそのままどちらかの家にお泊まりすることもよくあります。

複数の家族でミュージアムにおでかけし、一緒に楽しむ

子どもたちを見守るのは大人の役割。夫婦で自分の子どもを守るのはもちろんですが、親戚や友人が連携して家族間コミュニティを形成し、子育てに必要なサポートも「できる人がやる」のが当たり前。みんなで自分たちの子どもを守るという考え方です。送り迎えだけでなく、食事会やフィーカ、週末のおでかけなどのイベントごとも同じです。

毎日少しずつ時間を共有してサポートし合うことは、子どもみんなの成長を見守ることになります。家族間コミュニティにより、夫婦の負担が軽減されるだけでなく、子どもたちにとって他の大人との接点が増え、社会が広がるきっかけにもなります。

自立した親子関係でサポートしあえる仲間に

家庭において、家事を平等かつ効率的に分担するのは難しいですよね。スウェーデンでは夫婦がしっかり分担しているのはもちろん、子どもたちも積極的に家事をサポートします。

ホストファミリーではティーンになった息子たちが夜ご飯のメインディッシュ作りのシフトに入っていました。学校から帰ってキッチンに立ち、親の助けを借りずに一人で作りきります。母親は近くのテーブルで仕事をしていますが、横目で見るだけで子どもに任せます。

また親が忙しいときには、まだ幼い兄弟たちにご飯を食べさせたり、食後のフィーカのためにコーヒーを淹れるなど、家族に頼まれると慣れた様子で家事をこなしていました。

食後のフィーカの様子。クリスマスシーズンはホットワインが登場する

親は子どもが小さいころから、彼らの個性を伸ばすような経験の機会を提供したり、年齢に応じた行動規範や期待を言語化し伝えています。ホストファミリーの場合は13歳になると大人と一緒に食後のフィーカを楽しめる(それより小さい子どもは早く寝るため)などのルールがありました。それにより子どもに自立心が育まれ、親を頼るだけでなく家族の一員としてサポートする役割を担おうとする意識が高まっていきます。

子どもの成長をオープンに見守る

スウェーデンの友人たちの子育てを近くで見ていると、私自分も彼らの子どもたちの成長に関わっている一人なのだということに気づかされます。

その理由は、子どもたちの成長プランを知る機会が多いからです。前回の記事でも紹介した、ホストシスターからの「知識や経験をたくさん共有しようとする姿を子どもたちに見せてくれることは、彼らの将来にいい影響を与える」という言葉もそのひとつです。

主催した日本食パーティーでの折り紙体験コーナー
友人宅にて。4歳の子ども集合写真撮影に初挑戦。手ブレもいい思い出

子どもたちに今後どんな経験をさせたいか、そのために周囲の大人たちにどう関わってもらいたいのか。親は子どもに期待を伝えるのと同様に、子どもの成長に必要な機会やプロセスを友人にもオープンにするため、他の大人たちがどう見守ればよいのかがクリアになります。

たとえば、ホストシスターは子どもが高校生になったら、海外留学をしてさまざまな文化に触れてほしいと考えていました。そのため、異文化に触れて興味をもつということを、日本人である私を通じて体験してほしいと考えていました。

ホストシスターからその話を聞いてから、私自身も子どもたちとの接し方について主体的に考え、限られた時間がお互いにとっていい経験になるよう意識して行動するようになりました。

家族同士や親子、そしてもう周囲の大人たちや社会全体がつながっていくことで、仕事と子育てをサポートしあえるチームワークが生まれます。どの場面においても、関わるメンバーが主体的に行動していました。子育てに限らず、主体性をもったチームワークを作り出すことこそが、楽しさを引き出すポイントなのかもしれないですね。

これまでの【北欧のライフスタイルから学ぶちょうどいい生活】は

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