世界を魅了した風景画家、吉田博の世界 東京都美術館

東京都美術館(東京・台東区)で開催中の版画の展覧会では、イギリスのダイアナ元王妃が執務室に飾っていた絵の実物を間近で鑑賞することもできます。プリンセスをも魅了したのは、日本の天才画家・吉田博の作品です。

作者の吉田博(1876~1950)は明治から昭和にかけて活躍した木版画家です。普段の柔和な表情からは想像できませんが、作品に関しては一切妥協することなく「絵の鬼」と呼ばれました。その強い心と繊細な指先が、数々の名作を生み出しました。

今回の展覧会では風景や動物などおよそ200点もの作品を楽しむことができます。会場の東京都美術館・学芸員の小林明子さんは「吉田は国内外さまざまな場所を旅した画家で、今回の展覧会でも世界各国の風景をご覧いただける。(現在は新型コロナで)外出しづらい状況が続いているので、吉田が描いた風景を見て旅気分を味わってほしい」と話しています。

福岡から17歳で上京し亡くなるまで東京で暮らした吉田は、東京の風景も数多く描いています。上野の東照宮から眺める五重塔の姿は今も吉田が描いた当時もほとんど変わっていませんが、違うところがあるとすれば行き交う人々の様子です。コロナ禍の今、道行く人々はほとんどがマスク姿で、吉田の作品に描かれた"人々が大勢で集まって楽しむ姿”とは程遠い状況です。

世界中に平穏な日が一日も早く戻ってくるのを、天国の吉田もきっと願っていることでしょう。

■「没後70年 吉田博展」
東京都美術館・企画展示室で、2021年3月28日(日)まで開催中
(会期中、一部展示差し替えあり)
午前9時30分~午後5時30分,月曜日休み

© TOKYO MX