佐世保署員パワハラ自殺 妻が公務災害請求 超過勤務「月200時間前後」 長崎県警

亡くなった警部補の結婚指輪を付け「苦悩をもっと理解してあげるべきだった」と語る妻。机には警部補が使っていた眼鏡も置かれていた=県庁

 昨年10月、上司からパワーハラスメントを受けていた佐世保署交通課の男性警部補=当時(41)=が自殺した問題で、警部補の妻は3日、長崎県警に公務災害認定請求書を提出した。請求書では、警部補は上司から度重なる叱責(しっせき)を受けた上、同署での超過勤務は月200時間前後に上っていたと指摘した。
 請求書によると、警部補は昨年3月、佐世保署の交通課交通捜査係長を命じられた。自殺するまでの約半年間、直属の上司の交通課長(当時)から、ほかの職員らがいる前で、少なくとも週2回の頻度で「できないなら係長をやめろ」などと叱責(しっせき)を受けた。課長は「俺のパワハラに耐えられるなら」と、パワハラを自認していたという。
 さらに署長(当時)や課長は「事件・事故への突発的対応以外は超過勤務として認めない」と指示。勤務時間の過少申告が常態化し、警部補の実際の超過勤務は、パソコンの起動履歴から月200時間前後とみられ、過労死ラインとされる「月80時間」を大幅に超えていた。自殺直前の3、4日間はほとんど睡眠が取れない状態で、うつ病やストレス障害を発症していたと考えられる、としている。
 請求書を提出後、警部補の妻は代理人と共に記者会見。遺書について、一部を除き公表した。署長と課長のパワハラを訴え、「改善されることを願います」と締めくくられていた。
 妻は会見で「主人は生前、『命に代えられるものは何一つない』と言っていた。人としての根底の考え方を覆されたのだから、長時間労働と耐えがたいパワハラで精神的に追い詰められていたと思う。主人の死が仕事によるものと認められると信じている」と語った。
 警部補の自殺を巡り、県警は昨年12月、課長の言動をパワハラと認定。課長を戒告の懲戒処分、署長は管理監督責任で本部長注意としたが、パワハラの行為責任はないとした。2人はいずれも依願退職した。
 請求書の提出について、県警警務課は「今後調査などの依頼があれば、適切、誠実に対応する」とした。


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