2軍で打率.344も「反省しかなかった」 ロッテ高部瑛斗に宿るあくなき向上心

ロッテ・高部瑛斗【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

ファームで優秀選手も「いいシーズンだったとは思えない」

ロッテ2年目の高部瑛斗外野手はキャンプ3日目を終え、「とても充実した日々を送れています」と満足げだった。1年目の昨季はファームで打率.344も「反省しかなかった」と振り返る23歳は、走攻守すべてレベルアップを目指し沖縄・石垣島キャンプに臨んでいる。

国士舘大では通算129安打を放ち、東都2部の歴代最多安打記録を更新したヒットマン。昨季ファームでは67試合に出場し、イースタン・リーグ2位の打率.344、同5位の66安打を放ち、リーグの優秀選手賞・新人賞・努力賞を受賞した。

それでも、昨シーズンを振り返った高部は反省しきりだった。

「(手応えは)全くないです。僕の中ではできたシーズンだったなとは思いませんし、今思い出すのも悔しいことばかり。打てないとかもそうですけど、技術的な部分が欠けている。まだまだ足りないと思うことが多かった。三振数が多いし、走塁ミス、守備のエラー。当たり前にやらなきゃいけないことができなかったというのが強く印象に残っています。いいシーズンだったとは思えません」

開幕は2軍スタートだったが、安打を積み重ねてきた。9月には28安打を放ち、月間打率.431の大活躍。ファームの月間MVPにも輝いた。

2軍でアピールを続ける中、1軍初出場は突然訪れた。チーム内に新型コロナウイルスが発生したことにより「感染拡大防止特例2020」が適用され、出場選手登録を抹消された選手たちの“代替指名選手”として10月6日のオリックス戦(ZOZOマリン)で1軍初昇格を果たした。昇格を聞いたのは試合直前のことだった。

高部は「1番・左翼」でスタメン出場。「やってやろうという気持ちがありました。緊張よりも、気持ちの整理をするのに精一杯でした」と振り返る。

初対戦の相手は球界を代表する投手「こういうピッチャーを打たないと…」

相手先発は山本由伸。球界を代表する投手を相手に2三振を喫し3打数無安打(試合では4打数無安打3三振)と完璧に抑え込まれる。これまで体感したことのないボールだった。

「日本でもトップレベルのピッチャーで、素晴らしいキレの変化球だったり、真っすぐがあったので、こういうピッチャーを打たないとプロ野球選手として一流になれないんだなというのは強く思いました」と1軍で活躍する投手の凄さを肌で感じ取った。

一方で「自分の中で自分を過信していた部分があって、それが分かったので(1年目は)良かったとも思います」と、この経験を前向きにも捉えている。

このキャンプでは松中信彦臨時打撃コーチから“金言”を授かった。「上体を『立てるように』、足を『流さないように』と。そういった細かい部分を見てくださっているのでありがたいです」。これまであまり意識してこなかった部分の指摘を受けたことに感謝する。

幼い頃から負けず嫌いの性格だった。1軍初出場の翌日にスタメンを譲った藤原恭大外野手は今季も外野の一角を争うライバル。勝ちたい気持ちは「もちろんあります」と力を込める。

もちろん自分にも負けることは許さない。「自分が満足することはないと思う。自分ができることを全てやり切るという思いで一日一日を過ごして、少しでも自分の能力、レベルを上げていきたい。素晴らしいシーズンになるようにしたいと思います」。2軍で結果は残した。次は1軍の舞台で結果を残せる選手になれるよう努力を積み重ねる。

○高部瑛斗(たかべ・あきと)1997年12月11日、神奈川県高座郡出身。23歳。中学時は越生ボーイズに所属。東海大甲府高では3年夏に甲子園出場。3回戦で早稲田実業高に敗れる。国士館大進学後は通算129安打を放ち、東都2部の歴代最多安打記録を更新。2019年ドラフト会議でロッテから3位指名を受け入団。178センチ、72キロ。右投げ左打ち。(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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