コロナ禍での諫早市長選 2カ月切る 三つどもえ 前哨戦激化 山村氏・重ねる演説「足で稼ぐ」 宮本氏・安定した手腕に信頼感 大久保氏・短期決戦へ“風”起こす

(写真右から)住宅街でミニ演説を重ねる山村氏=諫早市幸町、公務を続けながら支持拡大に努める宮本氏=同市役所、朝のつじ立ちで支援を訴える大久保氏=同市貝津町

 任期満了に伴う諫早市長選(3月21日告示、同28日投開票)まで2カ月を切った。現職の宮本明雄氏(71)=無所属、自民推薦=に、元国土交通省職員の山村健志氏(46)と県議の大久保潔重氏(54)=いずれも無所属新人=が挑む三つどもえの構図が濃厚だ。コロナ禍で従来の活動が制約される中、激しい前哨戦が繰り広げられている。

 山村氏は経済界の一部の出馬要請を受け、昨年6月に同省退職。2017年4月から3年間の同省長崎河川国道事務所諫早出張所長時代の行動力を買われた。
 所長在任中、駅前公園(永昌東町)と本明川河川敷との間に親水空間を整備する計画を周辺住民とともに立案。国営諫早湾干拓事業で生まれた干陸地の一部でのクロスカントリーコース整備では、公共工事の残土を軟弱な干潟跡に埋めるアイデアで活路を開いた。
 昨年9月の正式表明後、朝のつじ立ちや支援者回りをはじめ、幅広い世代と対話。▽都市計画を見直し、10年後の人口1万人増▽危機管理室の新設▽未就学児の医療費無料化▽医療と福祉の連携システム構築-などの公約を練り上げた。
 「多くの人に集まってもらうことも控えざるを得ない。私が町に出て、考えを知ってもらいたい」。マイク付き拡声器を背負い、住宅街などで1日数十回、3分程度のミニ演説を重ねる。「目標は2千回。足で稼いでいく」
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 昨年夏以降、宮本氏の4選を推す声も相次いだ。手堅い行政手腕への信頼感と進行中の大型事業の完成を託す思いからだ。
 市職員出身。副市長を経て、2009年4月に初当選。3期目の前回、与野党の推薦を受け、新人2人を退けた。公約の一つが、企業誘致用の南諫早産業団地や(仮称)新文芸・音楽ホールの整備。同団地1工区(約11ヘクタール)の工事難航で、2工区(約9ヘクタール)の完成は2年遅れの23年度に。コロナ禍で同ホールの設計業務も遅れた。定住人口増加に向けた土地開発の規制緩和で、19年の住宅着工数は千件を超えた。
 昨年11月の出馬会見。「めどが立つはずの事業がコロナ禍で道半ばとなった。落ち込んだ経済を立て直し、市民生活を守るのが使命」。直前まで出馬を悩み、コロナ禍がなければ勇退もあり得たことを示唆。出馬表明直前、後援会長が交代し、市職員OBらによる新体制が始動したが、大規模な会合は自粛。公務の合間に支援者回りを続ける。
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 かねて「待望論」があった大久保氏も街頭活動を続けていた。昨年12月、業界団体の要請を受け、1月中旬に出馬を表明。新型コロナ対策と頻発する災害対策を柱に据え、定住・交流人口の増加や地場産業の育成などを訴える。「4年前も出馬を請われたが、宮本市長の3期目を期待する声があり、見送った。今回は『市政を変えてほしい』という市民の声に後押しされ、出番だと考えた」
 大久保氏は2月中旬までに県議を辞職し、市長選に臨む考えを示しているが、出馬の背景を巡り、臆測が飛び交う。「山村氏への票が分散し、現職が有利になる」「新たな選択肢として、現職票を奪う」「現職の5選はない。大久保氏が今、手を挙げなければ次の芽はない」-。
 旧民主党の参院議員を経て、無所属で県議に復帰し現在、自民系会派に属す大久保氏。国や県、出身の長崎大との“パイプ役”を強調。短期決戦で“風”を起こそうと、朝のつじ立ちや支援者回りに走る。
 前回、宮本氏推薦の政党などの対応も分かれ始めた。自民は1月末、宮本氏を推薦したが、旧民進の流れをくむ国民民主は自主投票を決め、同じく立憲民主は「現時点で未定」。公明と連合長崎は「検討中」。
 実績重視か世代交代による変化か-。コロナ対策や人口増に向けたまちづくり、防災対策などの争点が絞り込まれつつあり、熱い論戦に期待が高まる。

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