「青木すぎる市議選」、再び!佐賀県唐津市で起こった同姓同名・読み方も同じ立候補者たちの選挙

その土地に長く住む人が多い地方では同じ苗字の人ばかりということもあります。実際に、同じ苗字の人が何人も立候補した町村議会選挙も過去、たくさんあります。
そんな選挙で、投票用紙に苗字だけが書かれている票が投じられた場合、「按分(あんぶん)」という処理が行われます。

例えば、「山本A」候補と「山本B」候補が出馬している選挙で投じられた「山本」とだけ書かれていた票は、それぞれの得票数に合わせて分けられます。
「山本A」と書かれた票が800票、「山本B」と書かれた票が200票あったとすると、「山本」とだけ書かれた票は「山本A」候補に0.8票、「山本B」候補に0.2票と按分されます。

佐賀県唐津市で起きた「青木」さん対決!

先週末の1月31日が投開票だった佐賀県唐津市議会議員選挙では、2人の「青木茂(あおきしげる)」さんが立候補するという珍しい事態が起こりました。

2004年に行われた沖縄県北中城村長選挙では、現職の喜屋武馨(きゃん・かおる)氏と、元村議会議長の喜屋武薫(きゃん・かおる)氏が出馬しました。漢字は異なるものの、読み方は一緒です。
そこで、2人の喜屋武氏は、混同を避けるためそれぞれ「キヤン村長」「ギチヨカオル」(ギチヨは議長の意味)とポスターに書いて選挙を戦いました。このように、同姓同名の場合は「肩書」や「職歴」、他には「居住地域」「年齢」などを併記してもらうような対応を取ります。

また、昨年2020年4月に行われた衆議院静岡4区補欠選挙でも同姓同名・読み方も同じ「田中健」氏が2人立候補しました。この時はもう一方の田中健と区別をつけるため、氏名とともに「年齢」を強くアピールするという対応を取っていました。

今回の唐津市議会議員選挙では、2人の「青木茂」を区別するために両陣営は「年齢」を氏名とともに強調していたようです。

4年前も「青木茂」対決が?!

佐賀県唐津市議会議員選挙で「青木茂」対決が起こったのは実は今回が初めてではありません。4年前の2017年に行われた唐津市議会議員選挙でも、今回と同じ2人の「青木茂」氏が立候補していました。その時は今回のように「年齢」のみならず「新人か現職か」なども併せて告知をしていたようです。

候補者のみならず選挙管理委員会からも「青木茂さんは2名いるのでお気をつけてください」と告知すればいいのに……と言いたいところですが、そうすると「青木茂」以外の他の候補者たちより2人の名前を目立たせてしまう可能性もあり、選管が注意を呼びかけることは難しいようです。

同姓同名は「青木さん」ばかり…

同姓同名の方が立候補したケースは、全国でこれまで数件しか見られていません。1997年9月の神奈川県 真鶴町議選挙でも同姓同名の方が立候補しているのですが、こちらも「青木」さんでした(青木透)。

さらに同じ真鶴町で2001年の選挙の際には、候補者のうちなんと6人の苗字が「青木」さんでした。これは割合にして35%。3人に1人が「青木」さんという珍しい事態が起こっていました。

真鶴町は元から「青木」さんが多い地域だそうですが、今回佐賀県で起きている同姓同名の立候補も「青木」さんと青木続きとなっています。

海外では選択式や番号で投票

アメリカ大統領選挙では、投票用紙に最初から候補者名が記されており、マークシート方式で記入する投票方法を用いている州もあり、台湾の総統選挙では候補者につけられた番号を投票することで知られています。一方、日本では「鉛筆で紙に、候補者の名前を書く」ため、書き間違えなども多数起こっていると思われています。

日本でも一部自治体で行われている選択式の投票用紙(記号式投票)や電子投票の普及が進めば按分票での泣き笑いや開票所での煩雑な処理は少なくなるかもしれませんね。

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