五島市議選 終盤情勢 “コロナ選挙”に戸惑い 投票率や当落ライン不透明

庁舎建て替えが進む五島市役所前の市議選ポスター掲示板。21人がしのぎを削る=同市福江町

 1月31日に告示された長崎県五島市議選は、定数18に対し21人(現職14、新人・元職7)が立候補し、7日の投票に向けて終盤戦に突入した。新型コロナ禍で集会や握手は避けざるを得ず、多くの陣営が距離を取れる街頭活動に限定。「票が読めない」「政策が伝わってこない」-。候補者と有権者それぞれが慣れない“コロナ選挙”に戸惑い、投票率や当落ラインも不透明だ。
 市内では今年に入って感染者が急増し、1月7~24日公表分で33人を数えた。告示日前にいったん収束した形だが、市民の警戒感は払拭(ふっしょく)されていない。ある現職は「政策を語る集会は取りやめ、握手もできない。少しでも市民の『目に触れる』よう街頭演説を増やすしかない」と明かす。
 投票率にも影を落としそうだ。同じくコロナ禍で実施された昨夏の市長選は59.34%で過去最低を更新。単純に比較はできないが、今回の市議選でも複数の陣営が「高齢者を中心に投票所へ行くことを控えるのでは」と懸念する。前回市議選の72.32%(過去最低)を下回るとみる向きが多く、6割台後半まで下がるとの声もある。
 候補者を地区別に見ると、福江10、富江1、玉之浦2、三井楽3、岐宿2、奈留3。このうち福江の次に人口が多い富江から出馬する候補者は1人だけ。富江町の住民男性は「今回は他地区の候補者の選挙カーがよく回っているようだ」。前回、富江から出馬した3人が得た計2500票以上を巡り、“草刈り場”になっているとみられる。
 また大票田の福江地区にも連日、他地区から多くの候補者が乗り入れる。福江に暮らす旧町出身の候補者もおり、福江を地盤とする候補者は「旧町出身者は地元の票を守りながら、福江に攻めてくる。守るばかりの選挙はつらい」と嘆く。
 過去2回の市議選は現職が全員当選。ただ今回は新人・元職の占める割合が3分の1と高いのも特徴だ。知名度で劣る新人は、コロナ禍で政策や信条を訴える機会が限られ「不利」との声もあるが、現職の1人は「新人には勢いがある。高齢者の投票控えも含め、コロナが現職、新人のどちらに有利か全く分からない」と情勢を読みあぐねる。
 前回、最下位当選者の得票は699票で、次点とは120票差。上位当選者の大量得票が見込まれる今回も、当落ラインは前回同様か下回る程度とみられ、当落線上で複数の候補者が競り合うとの予想が多い。
 肝心の政策論争は低調で名前の連呼が中心。昨夏に3選した野口市太郎市長の施策の是非や、新型コロナ対策について、具体的に訴える候補者は少ない。
 有権者数は3万1505人(男1万4787、女1万6718)=1月30日現在、市選管調べ=。

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