75年経て里帰りした川崎の半鐘、8日から市役所で展示

寺に返還された際の法要で読経する坂本住職と半鐘=昨年12月、川崎市川崎区の光明山遍照寺

 戦時中の戦況悪化に伴い政府が出した「金属類回収令」に応じて川崎市川崎区の光明山遍照寺が供出し、昨年12月に返還された半鐘が8日から、川崎市役所第3庁舎1階で展示される。「故郷に帰った半鐘展」(市教育委員会主催)として寺の歴史や、調査結果をまとめたパネルとともに展示する。18日まで。

 半鐘は高さ約64センチ、最大径約37センチ、重さ約30キロの青銅製。正徳元(1711)年12月に檀家(だんか)らが寺に寄進したとされる。寺の名などはやすりのようなもので消され、供出後に薬品で重量を記したとみられる「30kg」の文字も見える。

 金属回収令は、政府が1941年に砲弾などの武器の材料となる金属が不足したために公布。鍋や銅像、鐘といった金属が各家庭や寺院などから強制的に供出された。川崎市内では翌42年に供出が行われたとの記録があり、その際に供出されたと推測される。

 2019年、静岡県内の廃業する鉄工所で半鐘が見つかり、市教委が調査。消えかけた字を判読し、同寺のものと分かった。坂本圭司住職は「供出は知らなかった。そんなことがあったのかと驚いた」と語った。

 市内最古の半鐘とみられ、市教委は「半鐘の返還を記念し、寺の協力で展示する」としている。平日の午前8時半~午後5時で、入場無料。

© 株式会社神奈川新聞社