日欧の宇宙機関が2つのミッションで協定締結、機器の提供などで相互支援

火星圏に到着したMMX探査機を描いた想像図(Credit: JAXA)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月5日、JAXAの山川宏理事長と欧州宇宙機関(ESA)のヨハン=ディートリッヒ・ヴァーナー長官がオンライン会談を行ったことを明らかにしました。2月4日に行われたこの会談ではJAXAとESAの地球観測、宇宙科学・探査など広範に渡る協力案件の進捗状況が確認されるとともに、ESAの二重小惑星探査計画「Hera(ヘラ)」とJAXAの火星衛星探査計画「MMX」に関する協定も締結されています。

HeraはESA主導の小惑星探査ミッションで、アメリカ航空宇宙局(NASA)の「DART」との連携が特徴です。まず、2021年6月にNASAのDARTが打ち上げられ、地球近傍小惑星のひとつ「Didymos(ディディモス、推定直径780m)」に向かいます。ディディモスは「Dimorphos(ディモルフォス、推定直径160m)」とペアになった二重小惑星で、DARTのミッションでは小さいほうのディモルフォスに探査機を衝突させて軌道を変化させることが目的となっています。

Heraは2024年に打ち上げられて2026年にディディモスを周回する軌道に入る予定で、DARTが衝突した後のディモルフォスを観測し、衝突で形成されると予想される新しいクレーターを含むディモルフォスの地表の様子や内部の構造、質量などを探査します。DARTとHeraのミッションは、将来地球に衝突するかもしれない小惑星の軌道を変えて被害を未然に防ぐための取り組み「プラネタリー・ディフェンス(惑星防衛)」に貢献することになります。

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ディモルフォスを観測するHera探査機を描いた想像図(Credit: ESA–ScienceOffice.org)

いっぽうMMXはJAXAが主導するミッションで、探査機を火星の衛星フォボスに着陸させて表面のサンプルを採取し、地球に持ち帰ることを主な目的としています。小惑星探査機「はやぶさ2」や初代「はやぶさ」は瞬間的なタッチダウンでサンプルを採取しましたが、MMXでは探査機がフォボスの表面に数時間滞在し、ロボットアーム先端の採取装置を使って地表から2cmよりも深いところにあるサンプルを採取する方法が採用されています。

また、「はやぶさ2」に搭載されていた「MASCOT」と同様に、MMXの探査機にはドイツとフランスが共同開発したローバーを搭載することも計画されています。MMXは2024年に打ち上げられ、火星圏(火星とその周辺)には2025年に到着する予定です。

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今回締結された協定ではJAXAによるHeraの熱赤外カメラの提供や、ESAがMMXの探査機に搭載する通信機器の提供および地上局による探査機の追跡管制支援を行うことに加えて、JAXAとESAの双方がサイエンスを通して互いの主導するミッションに貢献・参画することが合意されたとのことです。

Heraの協定に署名したJAXAの山川理事長(左)とESAのヴァーナー長官(右)(Credit: JAXA/ISAS)

Image Credit: JAXA/ISAS
Source: JAXA/ISAS / JAXA / ESA
文/松村武宏

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