ワクチン接種準備「手探り」 人員、実施方法…課題多く 長崎県内自治体 

ワクチン接種に向け準備を進める職員=長崎市役所

 新型コロナウイルスのワクチン接種に向け、長崎県内自治体が準備を進めている。ただ、ワクチンの供給時期や量が決まっていないため、具体的な計画を立てられず「手探り状態」だ。自治体が接種業務を担う65歳以上の高齢者への優先接種は、早ければ4月1日から始まる見通し。すでに2カ月を切っており、接種方法や医師、看護師の確保など課題は山積している。
 「国のスケジュールはタイト。急がなければならない一方で、情報は小出し。手探り状態だ」。東彼川棚町の担当者は焦りの表情を浮かべる。
 まず65歳以上の高齢者から始まる一般住民を対象としたワクチン接種。約13万5千人を抱える長崎市は、インフルエンザのワクチン接種と同様、開業医などによる「個別接種」を主体に、体育館などでの「集団接種」も視野に入れ、市医師会と協議している。新型コロナ対応で医療体制が逼迫(ひっぱく)する中、「人員確保が最大の課題」。担当者は不安を口にする。
 島原市は市内に「医療従事者が少ない」とし、看護師資格を持つ市の保健師も動員する見込み。「集団」での課題の洗い出しのため、模擬訓練ができないか市医師会と相談している。
 「集団」をメインに調整するのは大村市。市医師会へのアンケートでは多くの医師が協力意向を示しているという。市施設2カ所を候補にしており、市民の要望が多ければ夜間対応(午後7時~9時ごろ)も検討する。同じく「集団」を軸にする西彼時津町は、2カ所を選定済み。各医療機関の平日診療に支障が出ないよう日曜に予約制で実施したい考えだ。町内で看護師の確保が難しい場合、県外からの派遣も選択肢に入れる。
 人口約2300人の北松小値賀町など小規模自治体も「集団」が中心。東彼東彼杵町は町総合会館を予定し、65歳以上の高齢者約3千人超については町側が接種日時を指定し、変更希望を電話で受け付ける方式がとれないか検討する。
 「市内各地と接種会場を結ぶ送迎バス」(大村市)「移動困難者にはタクシーの借り上げ」(東彼波佐見町)-といった交通弱者対策も検討課題に挙がる。
 対馬市は南北に約80キロと細長く、広大な島に集落が散在。移動手段を持たない高齢者も多い。そこで県対馬病院の八坂貴宏院長は、接種拠点を合併前の旧6町ごとなどに細分化し、医師らが巡る「巡回接種」を提案する。65歳以上の高齢者は約1万2千人。7割の接種希望を想定した場合、開業医の協力も得られれば1、2カ月程度で島内の高齢者の接種は終えるとシミュレーションする。
 2次離島を抱える五島市は「人口が少ない島では高齢者など優先接種対象者に限らず(同じ時期に)全島民が接種できるようにしたい」という。
 国の方針が定まらないことについて「国も走りながら対応を考えており、諦めのような気持ちもある」(佐世保市)との声も。大村市の担当者は「ワクチンの安全性を疑問視して接種控えが多くなるのではないかと懸念している。様子を見て後に人が集中しても困る」と国に対しワクチンの安全性の説明を求める。

 


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