「クラッシュ」の危険性とは? 「人々の常識や倫理に対する暴力性が際立っている」 トークショー開催

現在公開中のデヴィッド・クローネンバーグ監督作「クラッシュ 4K無修正版」のトークショーが、6日にシネマート新宿で行われ、映画評論家で原作「クラッシュ」の翻訳も手掛けた柳下毅一郎と、映画評論家・デザイナーの高橋ヨシキが登壇した。

「クラッシュ」は、イギリスのSF作家J・G・バラードが1973年に発表した同名小説を、「ザ・フライ」「裸のランチ」などを手掛けてきたデヴィッド・クローネンバーグ監督が映画化した作品。自動車事故により性的興奮を覚える人々を描いた内容で、第49回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞するなど称賛を浴びた。一方で、過激な性描写にイギリスの新聞「デイリー・メール」紙が1面で上映禁止を呼びかけるなど、賛否両論を巻き起こした。製作から25年を迎え、「4K無修正版」として公開されている。

トークショーは上映終了後に実施された。2人と「クラッシュ」との出会いが話題となり、高橋は「付き合っていた恋人と別れた日に、大通りで目にした『クラッシュ』の文字に惹かれて観賞し、大いに感銘を受けて心の傷が癒された」と、会場の笑いを誘った。一方の柳下は「生涯の一冊だと思っていて翻訳も担当した小説を、大好きな監督であるクローネンバーグが映画化するなんて、こんな最強の組み合わせなら自分が観るしかないと、カンヌまで行った」と運命的な出会いを明かした。

続いて、本作の危険性についての話に。柳下は「『クラッシュ』が狂っていて非倫理的な映画であるにも関わらず素晴らしく、映画として成立しているのは、あくまでも社会的な問題ではなく個人の妄執を描いているから」と分析。高橋は、以前にクローネンバーグが「この映画がバイオレントであるとしたら、マインドファックするからだ」と語っていたことを挙げ、「人々の常識や倫理に対する暴力性が際立っている」と、本作の真の危険性を主張した。最後に柳下が「この映画を観てマネをするとかではなく、人間として普通に生きるよりもっと別の事があるという事を強烈に突き付けてくる。それが良い悪いという話ではなくあまりに魅力的に描かれていることでいいことのように思えてくるから、今観ても危険な映画だ」とまとめ、イベントを締めくくった。

クラッシュ 4K無修正版
シネマート新宿ほか全国順次公開中
配給:アンプラグド
© 1996 ALLIANCE COMMUNICATIONS CORPORATION, IN TRUST
R18+

© 合同会社シングルライン