海外で笑われる“森会長の失言” 女性オリンピアンは「世界と日本の差」を指摘

井本直歩子氏

東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)による“女性蔑視発言”の波紋は、まだまだ収まりそうにない。そんな中、1996年アトランタ五輪競泳女子800メートルリレー代表で、昨年3月にギリシャで五輪の聖火引き継ぎ式に出席して注目を集めた井本直歩子氏(44)が本紙に「世界と日本の差」について激白。現在は国連児童基金(ユニセフ)職員として活動するなど長年世界各地で仕事に携わってきたからこそ感じる日本社会の問題点とは――。

――森会長の発言を聞いて何を感じた

井本氏(以下、井本):最初は絶句したが、やはりという気持ちもありました。これだけの騒動になったのは、男女平等を妨げている日本社会の現状に多くの国民が疑問を感じているからだと思います。森会長のご功績は大きく、私を含め多くの関係者が恩義を感じていると思いますが、それ以上に私は日本社会の男女平等化を進めることが国の発展のための課題だと思っています。

――日本社会の特徴は

井本:男女平等に対する理解が遅れています。何をしても「女性的」だとか、すぐ男女の目線で捉えられる。日本では男性の年配の方に「女性なのにすごいですね」と言われることがよくあってびっくりします。「対等じゃないんだな」と。

――海外の方の反応はどうだった

井本:みんなびっくりしてメールしてきました。「なにこれ?」ってジョークにして笑っていますね。周りの友人にも相当衝撃があったみたいです。

――海外の方がジェンダー格差は少ない

井本:まだまだですが、女性のトップや管理職も昔より多くなってきました。どこでも男女平等の問題意識が高いので、出世は女性の方が有利な時もあります。各組織が女性の数を増やそうと努力していて、優れている女性は上に上がっていきます。

――男女の隔たりなく話しやすい雰囲気がある

井本:私自身の組織のトップは女性ですし、中間管理職の私も男性の上司にも日常的に言いたいことをいつも言える文化です。日本ではまず、トップや管理職にジェンダー教育をやっていく必要があると思います。また、一人ひとりが忖度したり「どうせ聞いてくれないだろう」と諦めたりせず、間違ったことに対してきちんと発言していく努力が大事だと思う。

――海外の方々は意見をはっきり言う

井本:そうですね。ヒエラルキーはあるものの、上司もスタッフ全員の意見を聞こうとしていて、若い人でも意見を言えます。みんなで議論し合って、風通しよく物事を進めていけます。

――森会長の発言で東京五輪の開催に逆風が吹いている

井本:今は何を言っても批判される傾向にあるのに、こんな状況になってしまい、選手のことを思うと胸が痛いです。新型コロナウイルスで多くのリスクがあるのは明瞭ですが、選手の気持ちを考えると何とか開催できないかと祈っています。競泳の大会を見ていても、選手の人生をかけた熱意や努力が伝わってきたので、開催できないってことは考えたくない。

――開催するために必要なことは

井本:もちろんオリパラのためだけではなく、まずは感染を抑えなければならない。組織委や政府には、開催に備えた現実的な感染対策を明確にして、少しでも理解が深まるように会話をしてほしいですね。何とか希望を持てるように、私もお手伝いできることがあればしたいです。

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