「爆問バッテリー」か「田中×田中」か… マー君迎えた楽天の熾烈な正捕手争い

楽天の太田光、田中将大、田中貴也(左から)【写真:宮脇広久、荒川祐史】

昨季最多マスクの太田光、田中将の初ブルペンで捕手を務める

マー君とのバッテリーは譲れない──。田中将大投手の8年ぶり復帰で盛り上がる楽天だが、かつて名コンビを組んだ嶋基宏捕手は昨季からヤクルトでプレー。沖縄・金武町で行われている1軍キャンプでは、個性的な面々が熾烈な正捕手争いを繰り広げている。

現状で最も正捕手の座に近いのは大商大から入団し、3年目を迎えた24歳の太田光(ひかる)。田中が初めてブルペン入りした7日にボールを受けた。石井監督によると、光山バッテリー兼守備戦略コーチから「(太田が)受けたことのない投手なので」と推薦があったといい、「太田にとってもすごいプラスなこと。田中投手の球を受けるのはいい経験」と語った。

昨季はチーム最多の67試合でマスクをかぶったが、9月26日の西武戦で左肩を負傷。そこでシーズンを終えてしまったのが惜しまれる。売り物は強肩で、昨季の盗塁阻止率は「甲斐キャノン」ことソフトバンク・甲斐をも上回り、リーグトップの.333をマークした。「盗塁を刺せれば、投手も楽になる。少しでも抑止力になれれば」と胸を張る。

お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光(ひかり)と、読み方を別にすれば同姓同名。2019年オフに爆笑問題のラジオ番組に呼ばれて出演したこともある。田中将とバッテリーを組めば、田中&太田でまさに“爆問バッテリー”となる。

プロ1年目の2019年の新人合同自主トレ中には、新人1人1人が帰国中の田中将に質問をぶつける機会があった。太田は「一流の捕手の共通点は何でしょうか?」と聞き、田中から「常に周りが見えている」という答えを得たという。

「私生活を含めて、という意味と解釈しています」と太田。「田中さんはどの球種も一級品で、選択が難しい。試合の中で勉強することが多いと思うので、サインに首を振られたりしながら配球を学んでいきたいです」とイメージを膨らませている。

昨季途中に巨人から加入の田中貴が台頭、苦労人・下妻や「京都のドカベン」石原らも虎視眈々

太田が“爆問バッテリー”なら、昨季途中の9月30日に巨人から金銭トレードで移籍してきた田中貴也は「田中×田中バッテリー」の結成を狙う。ブルペンでは「ナイスボール!」などと一際大きな声が響き渡る元気印。楽天移籍後にプロ初打席、初安打、初本塁打をそれぞれ記録するなど1軍に居場所を築いた。「メディアの方からは名前のことをよく聞かれますが、そこは意識していません」と笑い、「田中将さんからは配球の考えを聞いてみたいですし、積極的にコミュ二ケーションを取って自分のレベルアップにつなげていきたいです」と意欲を示した。

下妻貴寛はプロ9年目の26歳。故障のため2018年10月にいったん育成選手となり、昨年2月に支配下登録に復帰した苦労人だ。シーズン後半には太田の故障などで、1軍で43試合の出場機会を得た。「今年は自分の力で1軍の枠を勝ち取りたい」と燃えている。

2013年入団で田中将とは1年だけ在籍が重なったが「球を受けたことはないので、今年は絶好のチャンス」と目を輝かせている。メジャーでの投球はチェック済みで、「日本にいた時とメジャーではスタイルが全然違う。どちらを主としていくのか、バッテリーを組む時にはしっかり聞いていきたい」と語る。

1軍キャンプにはもう1人、21歳の石原彪もいる。172センチ、96キロのガッシリとした体形で、通算42本塁打を放った京都翔英高時代には「京都のドカベン」の異名を取った。昨季は太田の故障後、ベテラン涌井のご指名を受け、9月30日以降6試合でバッテリーを組んだ。さらに1軍経験のある足立祐一、堀内謙伍らも2軍でキャンプを過ごしながらチャンスをうかがっている。

指揮官は今後、田中将の投球を多くの捕手に受けさせる考えを示し、捕手争いについても言及。「下妻はバッティングを頑張ればすごくいい選手になる。期待はしている。あとはトータルでできないと捕手は試合に出られない」と述べた。

「常勝チームには名捕手あり」といわれる。今年の楽天投手陣は田中将をはじめ、涌井、岸、則本昂、ドラフト1位ルーキー・早川、守護神を務める松井と豪華な顔ぶれがそろった。これを生かすも殺すも捕手次第だ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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