鷹・石川柊太、習得目指す“新球”なぜ投げない? 微細な感覚の違いと試行錯誤の日々

フリー打撃に登板したソフトバンク・石川柊太【写真:福谷佑介】

「瞬発力だったりはフィジカル面の取り組み。技術的に直結するかと言うと難しい」

宮崎キャンプ第2クール最終日となった7日に、このキャンプで初めて打撃投手に登板したソフトバンクの石川柊太投手。千賀滉大投手、東浜巨投手がリハビリ組で出遅れる中で、先発陣の中で昨季の投手2冠右腕はA組で調整を続けていっている。

このキャンプ初の打撃投手では変化球も交えながら、甲斐に27球、川瀬に24球を投げた。球が高めに浮いたり、変化球が抜ける場面もあり「素直にまだまだだなと。ただその中でもわかった部分もあった。収穫のあるバッティングピッチャーだった」と石川自身は振り返っていた。

まだまだ試行錯誤の段階にある。このオフは瞬発力、瞬間的にどうパワーを発揮するか、を意識して取り組んできた。体はひと回り大きくなったが、それによって、例年と違う感覚が生じ、この日の打撃投手でもその微細な感覚の違いを感じ取ったという。

「今年取り組んできたことは瞬発力だったりパワー発揮だったりですけど、それって結局フィジカル面の取り組みなので、技術的に直結するかと言うと難しい。ウエートをやればやるほど、フォームが悪くなるというのも間違いなくあるというのをヒシヒシと痛感している中で、ランニングでの感覚1つとっても例年と違うなというのがあった。試しの中での感覚だったので新しい発見。今日の打撃投手でもそれに気づけたので、そこで気づいたこと感じたことを突き詰めていきたい」

投手とは繊細な生き物である。毎日が同じ状態で投げられるわけではなく、日によってその感覚、バランスは異なる。オフの間に肉体を鍛え、筋力がアップしたり、体のサイズが変わると、それによってバランスや投球感覚も必然的に変わってくる。いま、その感覚の差の中に石川はいるということだろう。

新球種もキャンプで一度も投げず「他が悪かったら意味がない」

だからこそオフの間に考えついた新球種も「頭の片隅にしかない」という。自主トレ時には「カーブとカットボールの間のような球」とイメージを口にしていたが、自主トレ時に一度投げただけ。キャンプに入ってからはブルペンはもちろん、キャッチボールでも一度もそのボールを試していない。

それには明確な意図がある。まず「スライダーとカーブ、フォークがしっかり投げられないと、新球に取り組んだところでそれに引っ張られる」という。新球種を覚えようとすると、どうしてもその球種のキレや変化に意識が持っていかれる。石川の考えは、あくまでも今ある球種があってこその新球種。今はまだその段階に来ていないという。

「他がいいから投げてみて、オープン戦じゃなくても、シーズン中にいきなり投げるかも、という感覚です。イメージはあるんで、いい状態になったときにそれを投げてみたらどういう変化をするのか。いまこういう状態で投げたところで、頭ごなしにダメとは言えない。逆にそれが良かったとしても他が悪かったら意味がない。そういう意味でもまだ練習していないです」。あくまでも今持っている球種が投げられてこその新球種。突然、シーズン中の試合で初めて投げる可能性さえもあるという。

昨季は11勝をマークして、最多勝と最高勝率の投手2冠に輝いた石川。千賀と東浜が出遅れている今、開幕投手の可能性も囁かれるが、当の本人は「言われようが言われまいがやることは同じ。言われてるから頑張るじゃおかしい。それはみんな投手一緒。みんながエースだし、みんなが開幕投手という自覚と責任があれば、みんなが質の高い投手になれる」と無関心だ。

「開幕投手と言われようが言われまいが、エースと言われようが言われまいが、自覚と責任は変わらない」という石川にとって、今季果たしたい責任とはなんだろうか。「貯金を作るというところは果たしたい。貢献したい。1年間投げ続ける責任というところを1番に大事にしたいな、と思います」。決意のもと、開幕に向けて調整の段階を上げていく。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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