「トップ5%」社員の“87%”がしている、信頼されるコミュニケーション術は?

企業の働き方改革支援を事業としているクロスリバーは、ビジネスパーソン1万8000人を定点カメラ・ICレコーダー・GPSで調査、AI分析した結果、人事評価で「トップ5%」の評価を獲得していた社員には、再現性の高いルールがあることを発見しました。前回に引き続き、日本マイクロソフト業務執行役員の出身で、クロスリバーの代表取締役社長CEOである越川慎司氏の著書『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から抜粋して紹介します。


「好意の返報性」

「5%社員」は、仕事に対しての知識を十分保有しており、しっかりと考えて動くことができます。しかし、知識があるからと言って、それをひけらかしたり、他の人を下に見たりということを決してしません。

先輩だったり、上司の立場にあると、後輩や部下たちに対して偉そうな態度を取ってしまいがちです。過去の武勇伝を何度も話すダメ上司はこの部類です。しかし、「5%社員」はそういったことはせず、むしろ謙虚で、さらに質の高い知識を
習得しようと貪欲です。

つまり、「5%社員」は、「自分がわからないことがある」「まだ学べていないことがある」という前提に立っており、他者から自分が持っていない知見を獲得しようとしています。

「5%社員」は、自分がわからないことに当たった時は、質問をし、わからないところをそのままにはしておきません。問題に対して真摯に学び、新たな知識を得ようとします。そうすることで、上司からも信頼され、部下からも慕われるようになります。

また、相手に腹を割らせるには、自分も腹を割らないといけません。これは心理学でいう「好意の返報性」に通じるものがあります。

人に何か施しを受けたとき、お返しをしなければいけないという気持ちになることを「返報性の原理」といいます。先に相手が自己開示したとき、自分も同じ程度の情報を開示しようと考えるのは、この返報性の原理によるものです。

例えばデパートの地下の食品売り場での試食は、この「返報性の原理」を利用したものです。ちょっとしたものでも試食をしてしまうと、それを買わないといけないのではないかという負い目を感じて、ついつい購入してしまうものです。

「返報性の原理」は人とのコミュニケーションにおいても適用できます。相手が素直に腹を割って話せば、自分も腹を割って話したいと思うのです。例えば、同僚の働きがいを聞いてみたいと思ったら、「お前の働きがいって何?」と、一方的に聞いても12%の人しか答えてくれません。

一方、先に「自分がどういう時に働きがいを感じたか」というストーリーを伝え、その上で「働きがいを感じたことある?」と聞くと78 %の人が自分の働きがいを答えてくれます。

これは相手の精神的なハードルを下げる効果もあり、何でも言い合える心理的安全性が担保されるので、様々な情報を聞き出すことができます。「5%社員」はこの原理を理解しており、相手に多くの意見や情報を出させることを狙っています。

雑談をしたチームとしないチームで比較

例えば会議では、心理的ハードルを下げるために、いきなり本題に入ることなく雑談で参加者同士の心理的安全性を確認してから、意見を出し合うようにします。そうすることでたくさんのアイデアが出てきます。

クライアント26社で、アイデア出し会議の冒頭2分だけ雑談を入れたチームと、雑談を入れなかったチームでそれぞれ30組ずつ2週間実践して比較検証しました。

その結果、雑談ありの会議のチームのほうが、発言者数と発言数が2倍近く多くなり、かつ時間通りに終わる可能性が1・6倍高かったのです。アイデアがたくさん出れば、意思決定の判断材料は十分に集まりますので、「今日は時間がないから次回再びアイデアを出し合おう」とならないのです。

この心理的安全性を確保する上で、重要なことは、最初にくだらない発言をすることです。最初に難しい話をすると、次に発言する人の精神的なハードルが高まり発言しにくい空気になります。安全性が確保されていなければ話さないほうが安全なわけですから、発言量が減り、結果的にその会議の目的を達成しません。

これは自分の価値観を押し付けない、ということにもつながります。異質なつながりを作るには、不要な固定観念や無駄なこだわりなどを捨てる必要があり
ます。そのため、「5%社員」は自分の弱い部分を見せて決して強い部分によるマウンティングはしません。

調査をしていて印象的だったのは、「5%社員」は、はじめての人と関係を構築するときに、カジュアルな雑談から入り、そこで相手との距離感を縮めた上で、関係を構築するとなったときは、まず自分の弱みをさらけ出していました。

アンケート調査でも、「5%社員」は自分の弱みを出すことに抵抗がないと答えた人は73%いました。一方「95%社員」の中では弱みをさらけ出すことに抵抗がないと答えたのは23%でした。

もちろん、「5%社員」は相対的に弱みが少ないかもしれませんが、心構えとして不要なプライドに引っ張られることなく自分のできないことや弱点を相手に見せています。

これは心構えではありますが、コミュニケーション手法の一環としても捉えられます。決して弱い部分を見せることが目的ではなく、弱い部分を見せるという手段を通じて、相手の懐に入るという目的を持っています。

また、異質なつながりによって、新たな化学反応を起こそうとしていますので、まずはその異質な人たちの性格や能力といった要素を表に出そうとしているわけです。

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