低競争率なぜ

 「学者」のように学べ、「医者」のように診よ、「役者」のように魅了せよ、「易者」のように未来を見よ、「芸者」のように寄り添え-。教育界には「教師は五者たれ」とか「五者の精神」などと呼ばれる教えがあるそうだ▲魅了したり、寄り添ったり、未来を占ったり-の相手はもちろん教室の児童や生徒。初出や出典のはっきりしない“詠み人知らず”の名言らしい。一部が「忍者」や「挑戦者」に置き換わるバージョンもあるようだ▲学校の先生は子どもたちが初めて本格的に出会う“よその大人”で、教職員は子どもたちの未来をつくる仕事だ。「五者」には、先生方のそんな思いがにじみ出ているようで、個人的には心強さも感じるが▲教育現場は先生のなり手不足に頭を痛めている。2019年度に実施された公立小学校の教員採用試験の競争率が過去最低だったそうだ。自治体別では、本県と隣の佐賀県が1.4倍で最も低い▲無論、熱い志にあふれる志願者が競う少数激戦の結果ならば、数字だけを見て競争率の低下を憂う必要はあるまい。だが「量」から生まれてくる「質」があることもまた否定できない▲子どもの未来に携わることは、社会の未来をつくることでもある。その仕事が魅力を失っているのはなぜなのか。議論の深化が待たれる。(智)


© 株式会社長崎新聞社