たすきつないで70年 郡市対抗県下一周駅伝<中> 「発展と永続」求めて コース、日程に再考の余地

県下一周駅伝コース図

 1952(昭和27)年の初開催以来、数々の熱走ドラマを繰り広げてきた郡市対抗県下一周駅伝。長崎県の早春を彩る風物詩として定着している一方、人口減少や交通事情など取り巻く環境の変化や、女子、シニア層の競技熱の高まりなどもあり、一層の活性化を望む声も聞かれる。他県の類似大会とも比較しながら、課題を探った。

■10市3郡走破

 レースは3日間で県本土の全10市3郡を走破する。全42区間、407.3キロの長丁場だ。この中には、山間部をひたすら上ってひたすら下り、最後にまた少し上る第1日10区(12.3キロ)、3キロ近く上りが続く通称「小浜入り」の第2日13区(15.8キロ)といった難コースも多い。最終日は大会最長距離の1区(19.2キロ)、日見越えの17区(14.0キロ)でエース格がしのぎを削る。
 その最終日はバラエティーに富む。約3キロの7、9区はジュニア(中学)男子、5キロ前後の8、10区は40歳以上のシニア(壮年)男子が担う。各1.5キロの12、13区はトランスコスモススタジアム長崎内の周回コースで小学男女がたすきをつなぐ。3~5キロの14~16区、最終18区はそれぞれ女子選手(15区は中学限定)が火花を散らす。
 九州各県で行われている郡市対抗の主な駅伝大会を見ると、熊本(全14区間、103.3キロ)は1日で完結。佐賀(全33区間、272.9キロ)は3日間、大分(全39区間、390.8キロ)と鹿児島(全53区間、583.3キロ)は5日間かけて実施している。
 長崎の場合、同じ3日間の佐賀より総距離は約130キロ長い。1日の走破距離は、長崎の第2日の149.5キロが5県の中で最長となっている。

■意見さまざま

 幾多の名勝負を刻み、競技力向上や郷土意識の醸成に貢献してきたこの大会。ただ、上位と下位の戦力差の開きに伴う順位争いのパターン化などを憂う声もある。過去にも女子、ジュニア、シニア、小学生区間の創設など新機軸を打ち出してきたが、各チームや大会関係者からは期間、区間割り、大会規定の一部変更、チームの再編成を求める意見も上がっている。
 昨年、選手としてシニア区間で3年連続の区間賞を獲得した長崎チームの本村健太総監督(46)=長崎中央郵便局=は「シニアも細分化して『50歳以上』の枠があればいい。現行で日曜(最終日)に集中しているシニアと女子を土曜にも分け、シニア女子を新設してはどうか」と提案する。
 これに加えて、別の指導者らは戦力均衡の観点から「活躍の場を広げるためにも、市民ランナー限定の区間を」「大学生の登録人数を決めるべきだ」と指摘する。
 一方、対馬チームの田中光幸総監督(56)=対馬市役所=は「移動を考えると、シニアや女子、小中学生は日曜(最終日)にまとめて行う今の方がやりやすい」と現状を支持しながら「3日間開催は経費もかさむ。将来的にどうなるか」と懸念も口にする。過去には、九州一周駅伝が運営費の増大や安全面を理由に2013(平成25)年限りで終了している。

■見直しに柔軟

 こうした声も踏まえて、主催する長崎陸協の澤田洋理事長は「コースやチーム編成は絶対に見直した方がいい。単に規模縮小するだけじゃなく、これだったら楽しそうとか、こんな新しいことがあるんだという要素を入れて時代に合った形にすべき」と規定変更に柔軟な姿勢を見せる。
 大会は、各チームはもとより、関係機関、ボランティア、沿道の応援も含めて多くの人々の協力のもとに成り立っている。地域によって事情は異なり、ニーズも多様だが、共通の願いは大会の「発展と永続」。それぞれの立場で、さらに有意義な大会にしていくための手段を考えていきたい。


© 株式会社長崎新聞社