「観光地・波佐見」多角的に 「笑うツーリズム」刊行 町職員や研究者ら執筆

波佐見町の観光をテーマにした本「笑うツーリズム」を手にする竹田准教授(右)と小林常務=波佐見町

 ものづくりと観光を組み合わせた「クラフト・ツーリズム」の産業化を目指す長崎県東彼波佐見町の関係者が、同町の観光やまちづくりを解説した書籍「笑うツーリズム」(石風社)を刊行した。波佐見焼の知名度向上を追い風に、急成長した「観光地・波佐見」の過去と未来を、産官学の多角的な視点でひもといている。
 クラフト・ツーリズムは、400年続く波佐見焼の伝統技術や人材、食文化、景観などを観光資源に、インバウンド獲得を図る。日本各地の伝統文化や産業を海外に発信する経済産業省の「ローカルクールジャパン推進事業」の採択を受け、昨年2月にはものづくり産地11地域が参加した全国大会も同町で開いた。
 書籍には、全国大会でのパネル討論や実行委員長を務めた陶磁器商社「西海陶器」の児玉盛介会長の講演を収録。クラフト・ツーリズムのコンセプトや歩みを説明している。このほか、町職員やまちづくり関係者、研究者など約20人がそれぞれの切り口で同町の観光をテーマに執筆した。
 県立大の竹田英司准教授(地域経済学)は「なぜいまグリーン・クラフト・ツーリズムなのか」と題し、同町の地場産業と観光の可能性を考察。同町の観光客のリピート率の高さやふるさと納税額の急増などを指摘し、「地場産業の観光産業化が地域の生き残り戦略」と結論付けている。
 コロナ禍の影響で観光産業の先行きは不透明だが、グリーンクラフトツーリズム協議会事務局長で西海陶器の小林善輝常務は「今後10年の変化が1年で来た。地方への関心が高まり、むしろ波佐見の訴求力は高まる」と分析。書籍の編集も担った竹田准教授は「観光地・波佐見は時代にフィットするのではないか。本から波佐見の多様な可能性を知ってほしい」と話している。A5判、324ページ。1800円(税抜き)。

© 株式会社長崎新聞社