<隠れた名盤>渋谷すばる『NEED』マイルドな歌声に説得力

 約1年ぶりとなる2ndオリジナル・アルバム。前作は、パンキッシュに新たな人生を訴えていたが、本作は穏やかさが増しており、より多くの人が親しみやすい作品となっている。

 全11曲、どれも歌詞カードを見ずとも言葉がよく聞き取れるのが渋谷の大きな強みだ。シンプルなバンド演奏とマイルドな歌声で、大切な誰かとの静かな暮らしを表現した『Noise』、ネオフォーク系の爽快なサウンドの中、恋人と戯れているような『風のうた』などナチュラルな作品が多く、聴いていると当たり前の日常や、そこに寄り添う音楽や人がどれだけ大事かが分かる。

 特に7曲目からはどんどん引き込まれていく。1分を超える緩やかなイントロから一転する衝動的なロックチューン『たかぶる』での「俺には分かるぜ」の連続シャウトは胸に刺さるし、ピースフルに“みんな大切で全部だいじ”と歌う『今日はどんな一日だった』は忌野清志郎へのリスペクトに胸が熱くなる。さらに、シンプルに「人を傷つけてはいけないよ」と訴える『人』、涙まじり寸前で生きる喜びを熱唱する『素晴らしい世界に』、そしてバンド編成での『Sing』は、「歌が必要だ」と一緒に歌いたくなる終盤が感動的だ。ザ・コレクターズの加藤ひさしや、スターダスト☆レヴューの根本要にも通じる説得力があるので、“アイドル出身”と食わず嫌いな人にも聴いてほしい。

 より生音が映えるアナログ盤も同時発売。本作を聴けば、あらためて「あなたが必要だ」と誰かに伝えたくなるはず。

(ワーナーミュージック・CD 3000円+税)=臼井孝

© 一般社団法人共同通信社