入院中にプロ志望届提出 ロッテ育成左腕・本前郁也が1軍キャンプ抜擢で抱く野心

ロッテ・本前郁也【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

今オフはソフトバンク和田らと自主トレを行い体力面を強化

ロッテ春季キャンプの1軍投手陣の中にただひとり、3桁の背番号を背負う男がいる。

「最初に聞いた時から、いい状態にしてきました。ここまま長く(1軍に)いれるように」

育成2年目の本前郁也投手は、初めて1軍で迎えた球春の景色を振り返り「自分のペースで、持ち味を出していけているかなと思います」と軽くうなずいた。

ルーキーイヤーの昨季は2軍で11試合に登板。2勝0敗、防御率2.56の成績を残し、経験を積んだ。「やっぱり長いイニング投げられないっていうのが毎試合の課題でした。後半につかまることが多かったので、課題がはっきりした1年だったと思います」。反省をもとに、オフは同じ左腕のソフトバンク・和田毅、笠谷俊介、同僚の土肥星也らと自主トレを行い、走り込みや体幹トレーニングで1年間戦える体力作りに励んだ。

野球を始めたのは小学4年生の時。「最初はやる気はなかったんですけど……」。兄の卒団式で監督に突然背番号を渡され、半ば強制的に野球を始めたのがきっかけだった。

札幌光星高時代はエースとして道大会にも出場。その後、北翔大に進んだ。

プロを志したのは大学3年の時。北海高を春夏計6度の甲子園出場に導き、北翔大では4度リーグ制覇した大西昌美前監督から「お前は上でやれるから」と言われ、プロを意識し始めた。「大学では、真っすぐの強さが圧倒的に上がったのかなと思います」。走り込みや体幹トレーニングを重ね、球速は高校時代の136キロから12キロアップし148キロまで伸びた。

高校の先輩でもある西武・齊藤誠人から「待ってるからな」

2017年の育成ドラフト2位で西武に入団した齊藤誠人捕手は小中高の2学年先輩で、よく食事に連れて行ってもらっていた。「待ってるからな」という言葉をもらい、より一層プロへの気持ちが高まった。

札幌学生野球連盟1部リーグでは3度の最優秀投手に輝いた本前だったが、ドラフトを控えた2019年9月2日にアクシデントに見舞われた。日本製鉄室蘭シャークスとのオープン戦で、打球が頭部を直撃し、入院することに。「プロ1本だったので、ひとまず出しとこうと思って出しました」と入院中の同14日にプロ志望届を提出。育成1位でロッテから指名を受け、北翔大から初のプロ野球選手となった。

「指名された時にギリギリ動ける状態だったので……」。そんな状況でも指名してくれた球団には感謝しかなかった。

「育成からなんで、這い上がろうと思いました」とプロ入りした時の心境を振り返る。プロのスイングスピードやバッティング技術に驚きながら過ごした1年目を経て、今キャンプは育成投手で唯一の1軍キャンプスタート。11日の紅白戦では紅組の先発投手にも指名され、首脳陣から左腕にかかる期待は大きい。

11日からは第3クールで、実戦も始まっていく。目標とする選手に挙げた小島和哉、中村稔弥の他にも、山本大貴、鈴木昭汰ら若きサウスポーが凌ぎを削る投手陣の中で、チャンスを掴み取りたい。「自分に任せられたイニングの中で、持ち味であるまっすぐの投げ分けと、変化球のコンビネーションをしっかりして、アピールできればなと思います」。まずはキャンプで結果を残し、支配下登録と1軍の舞台での活躍する将来を見据えていた。

○本前郁也(もとまえ・ふみや)1997年10月2日、北海道札幌市出身。23歳。小学4年時に野球を始める。中学時は札幌白石シニアでプレーし、札幌光星高から北翔大学に進み大学通算14勝。札幌学生野球連盟1部リーグでは3度(2年春、3年春、3年秋)の最優秀投手となる。2019年育成ドラフト1位で入団。175センチ76キロ。左投げ左打ち。(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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