“マー君フィーバー”の陰で…楽天・石井監督が熱視線送る“19歳コンビ”の成長ぶり

楽天・黒川史陽(左)と武藤敦貴【写真:荒川祐史】

高校通算34本塁打の長距離砲と50メートル6秒0の俊足

田中将大投手の復帰で沸き帰っている楽天の沖縄・金武キャンプ。その“マー君フィーバー”の陰で、石井一久GM兼監督が秘かに熱い視線を送る若手成長株が2人いる。【宮脇広久】

今季の楽天投手陣は、田中将の復帰と最速155キロ左腕のドラフト1位・早川(早大)の入団によって、涌井、岸、則本昂、松井らを含め豪華な顔ぶれがそろった。一方の野手陣では、ベテランを脅かす若い芽が育ちつつある。2019年ドラフト2位の黒川史陽内野手と、同4位の武藤敦貴外野手。高卒2年目を迎えた19歳コンビだ。

智弁和歌山高時代に通算34本塁打、5季連続甲子園出場を誇った黒川は、ルーキーイヤーの昨年9月に早くも1軍昇格。デビュー戦をスタメンで飾り、初打席で右犠飛を打ち上げ、お立ち台にも上がった。

今年1月中旬には、守備の名手であるベテランの藤田一也内野手に弟子入りし、一緒に京都で2週間の自主トレに取り組んだ。「朝8時半から夜6時まで、本当に野球漬けでした。正直言って、これくらいやらないと1年間ケガなく過ごすことはできないのか、と実感しました」と振り返る。

黒川は「1年間1軍」が目標、武藤は右肩脱臼で思わぬ挫折

本職の二塁を中心に、内野ならどこでも守れる黒川だが、鈴木大、浅村、小深田、茂木ら実績のある選手がひしめく内野の一角を崩すのは容易ではない。「1年間1軍」を今季の目標に掲げ、キャンプに取り組んでいる。

一方の武藤は昨季、思わぬ挫折を味わった。50メートル6秒0の俊足で注目されていたが、昨年3月の紅白戦で帰塁時に右肩を脱臼。1軍戦出場を果たせず、イースタン・リーグでも3試合出場にとどまった。それでも昨年11月の宮崎フェニックス・リーグでは、全18試合に中堅手としフル出場。「それまで試合に出られなかった分、得た物があり、課題も見つかりました」と言う。

石井一久GM兼監督は「フェニックス・リーグの映像も見たが、武藤君はしっかりスイングできていて、バットを振る能力は黒川君より上かもしれない。あとは、黒川君のような打撃へのアプローチを磨いていけるかどうか」と評し、「いずれにせよ将来的には、その2人にしっかり打ってもらいたい」と近未来の打線の軸として期待している。

ポジションは違えど、「ライバルです。負けたくない」と意識し合う黒川と武藤。若手の成長を追い続けるのも、野球ファンの醍醐味のひとつだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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