「ベル・ザ・キャット」

 〈「猫が来たらすぐに分かるように猫の首に鈴を付けよう」「それは名案だ」。ネズミたちの相談がまとまったが、いざ実行となると誰もその役を買って出る者はいなかった…〉-「猫の首に鈴を付ける」は西洋の寓話が出典の成句だ▲少し興味深い発見をした。英語で〈BELL THE CAT〉と言えば〈難事を引き受けること〉だが、手元の国語辞典には〈一見すると名案でありながら、実行するのが極めて難しいことのたとえ〉とある▲ニュアンスが微妙に違う。英語では困難に立ち向かう勇敢な言葉なのに、日本語の方はどこか諦め交じりだ。ひょっとしたら、スタンドプレーの苦手な国民性の表れなのか…などと考えていたら▲小池百合子東京都知事が近く予定される五輪トップの4者会談を欠席するという。「いま話してもポジティブな発信にならない」などと告げ、ぷいっと立ち去るパフォーマンス付きで不快感もあらわに語った▲森喜朗・大会組織委会長の女性蔑視発言に対する非難がやまない。小池氏は直接的に辞任を求めたわけではないが、森氏が同席する限り「ポジティブな発信」などこの先も望み薄だ。「お辞めください」と迫ったに等しい▲猫の足元に鈴を届けた-ぐらいの効果はあるだろうか。辞任不可避の空気も広がりつつある。(智)


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