JATO、2020年12月欧州新車販売台数レポートを公開 販売減少するもEV需要は高まる

自動車産業の調査会社であるJATO Japan Limitedは2月3日、欧州の自動車市場についての最新レポートを公開した。通年の販売台数、12月単月ともに前年の水準を下回った一方で、ピュアEVとPHEVのシェアが上昇した。

■通年の販売台数は前年比24%減 1993年以来の低水準

2020年の欧州新車市場は、調査した27カ国のデータによると、2020年12月の台数は前年同月比3.8%減の1,212,858台であった。11月の減少幅よりも小さくなっているものの、通年の累計販売台数は24%減の11,941,633台となり、全体的な傾向を相殺するまでには至っていない。

最後に1,200万台を下回ったのは、1,182万台を記録した1993年までさかのぼるという。JATO DynamicsのグローバルアナリストであるFelipe Munoz氏は、「業界は2019年の最後の数カ月ですでに衰退の兆しを見せていたが、新型コロナウイルスの感染拡大は、これらの既存の傾向を加速させた。消費者が車を購入できないロックダウン状態にあることから、市場は前例のない環境に移行している」と語った。

■ピュアEVとPHEVのシェアが前年同月のほぼ4倍 ディーゼルに比肩

12月の販売台数の減少は、イタリア、フランス、イギリスでSUVが2桁の減少となったことに起因した。 ピュアEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)が大幅に増加したにもかかわらず、ディーゼル車やガソリン車の販売台数が伸び悩んだことに加えて、需要自体が減少したため、市場全体では減少傾向が続く。

前年同月(2019年12月)の結果と比較すると、SUVのマーケットシェアは41.7%から40.2%に縮小している。販売台数は487,560台で、サブセグメントとして最大であるコンパクトSUVの11%減に続き、7.2%の減少を記録した。

Munoz氏は、「最近SUVの成長が停滞しているのには、2つの重要な要因がある。第一に、数カ月間の継続的な成長の後に、SUVの新規販売台数が横ばいになる可能性は常にあったこと。第二に、欧州各国の政府による新たな電動化の推進により、市場の関心がSUVから遠ざかっていて、特に購入可能なSUVのピュアEVがまだ非常に少ないことが挙げられる」と続けた。

ハイブリッド車(HEV)とマイルドハイブリッド(MHEV)を含めても、ガソリン車とディーゼル車の需要はそれぞれ23%減少し、ピュアEVとPHEVの需要が271%増加したのとは対照的だ。その結果、電気自動車とディーゼル車のギャップは縮小し、BEVとPHEVを合わせたシェアが24.1%なのに対し、ディーゼル車は24.7%だった。これは、電気自動車が市場全体の6.3%に過ぎなかった2019年12月と比較すると特に顕著な結果だ。

■依然、VW のゴルフが人気 ID.3も伸長

電気自動車の需要が高まった結果、2モデルの電気自動車が欧州のモデル別販売台数ランキングのトップ3に入った。フォルクスワーゲンID.3は、人気の高いフォルクスワーゲン ゴルフに次いで、当月で約28,000台の販売を記録し、欧州で2番目に販売台数の多いモデルとなった。JATOによると、これはオランダ、スウェーデン、オーストリアでの好成績によるものだという。ID.3はドイツで3番目に売れたモデルで、イギリスでは4番目、デンマーク、ノルウェー、ルクセンブルクでは2番目に売れたモデルだった。

12月の総合ランキングでは、テスラ モデル3がその後に続いた。Munoz氏は、「ヨーロッパでは今、電気自動車革命が起きようとしている。当月の結果は、電気自動車が適切な価格で販売されれば、人気のあるガソリン車やディーゼル車から消費者を引き寄せることができることを明確に示している」と述べた。

最近のEV成長で恩恵を受けているモデルは、ピュアEV版が増加したフィアット500や、プジョー2008、ヒュンダイ コナ(Hyundai Kona)、オペル/ボクスホール コルサ(Opel/Vauxhall Corsa)、ルノー ゾエ(Zoe)などが挙げられる。ランキング外では、セアト レオン(66%増)、ボルボ XC40(67%増)、シュコダ カミークの(58%増)、フォルクスワーゲン UP(58%増)、キア ニロの(99%増)、ニッサン ジュークの(90%増)、ニッサン リーフ(94%増)。

最近発表されたモデルでは、フォード プーマ(Puma)が12,874台、フォルクスワーゲン ID.4が4,714台、メルセデス GLBが4,013台、マツダ MX-30が3,327台、ポールスター(Polestar) モデル2が3,117台、シトロエン C4が2,314台、アウディ e-tronスポーツバックが1,962台、ポルシェ タイカンが1,912台をそれぞれ販売した。

なお、当記事で紹介したJATOのレポートは下記サイトで閲覧できる(PDFダウンロードにも対応しているとのこと)。

https://www.jato.com/japan/media-insight/

(出典:JATO Japan Limited プレスリリースより なお、同リリースは英・JATO Dynamics Limitedによる1月27日発表の邦訳)

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