島豆腐の沼にハマった男 「あちこーこー豆腐」の危機に伝道師として動き出す

 【豊見城】「島豆腐の沼にハマってしまいました」―。島豆腐のとりこになり、その魅力を広く世に伝えようと活動している“島豆腐の伝道師”がいる。「島豆腐百科」の完成を夢見ている金城直弥さん(36)=沖縄県豊見城市=だ。まずは来秋の「島豆腐フェスタ」開催を目指して、日々工場や製造者を訪ね歩き、島豆腐についての知識を深めながら協力を呼び掛けている。

 金城さんは那覇市松川出身。近くの繁多川地域はかつて「豆腐の里」と呼ばれたほど豆腐店が多かった。その名残なのか、金城さんの家の近所には、さまざまな種類の島豆腐があった。お気に入りは長堂豆腐。しかし30歳で結婚して豊見城市に移ると、なじみの島豆腐が見つからなかった。「残念という気持ちよりも、島豆腐ってこんなに種類があるんだと興味が湧いた」

 新天地では、一体どんな島豆腐に出合えるだろうかとワクワクしながらインターネットで調べ始めたが、詳しい情報はあまり見つからなかった。「こんなに身近な食べ物なのになぜだ。余計気になる」

 一方で、閉店した豆腐店がいくつもあることを知った。国際的な食品安全管理基準「HACCP(ハサップ)」の考え方に基づいた食品管理が求められ、作りたての「あちこーこー島豆腐」がこれまで通り販売できなくなる現状もある。「島豆腐の危機だ」。金城さんは伝道師としての行動を開始した。

 「島豆腐は県民食と言っていい。店によって大豆の濃さなど味が違っていて面白いのに、その違いを詳しく取り上げた本や資料は見たことがない」。それなら自分で作ろうと「島豆腐百科」の完成を目標にした。

 来秋開催を目指す「島豆腐フェスタ」では、多種類の島豆腐を試食してもらい、味の違いを体感してもらう。また各店舗の島豆腐を紹介した「島豆腐カード」を作成し、コレクション感覚で楽しめないか思案している。「島豆腐は奥が深い。百科完成までには、もっと県民に愛される食べ物になっているはずだ」と目を輝かせた。

 (嘉数陽)

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