ドラァグクイーンたちの感情込もったトーク 母親に思いを馳せ 「ステージ・マザー」ジャパンプレミア

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このほど大分県別府市の別府ブルーバード劇場で開催された「十人十色映画祭」で、映画「ステージ・マザー」のジャパンプレミアが開催された。上映後には、ブルボンヌ、バブリーナ、ドリアン・ロロブリジーダ、ナナ・ヴィクトリア、レスペランザ、ベビーヴァギー、パルプ、ぽり美、虹子ロンドンの、9人のドラァグクイーンたちによるトークショーが実施された。

映内では、生前は疎遠となっていた息子の遺したゲイバーを引き継いだ主婦が、ゲイバーで働くドラァグクイーンたちと経営を再建しようとする様子が描かれている。トークショーに参加したドラァグクイーンたちは、「わたしは、母親を亡くしているので、母を思い出して胸にグッとくるものがありました」(ドリアン・ロロブリジーダ)、「実家に帰って母に会いたくなっちゃった」(パルプ)と、それぞれ自らの母親に思いを馳せていた。

最年長のブルボンヌは、「ドラァグクイーン業界には、おなかを痛めて産んだわけではないけど、後輩の女装を育てるシステムがあって、その時に育てた人をドラァグマザーっていうんです」と、劇中にも登場する”ドラァグマザー”について説明。1980年代のニューヨーク・ハーレムで”ハウス”と呼ばれるコミュニティがあり、身寄りのないゲイやトランスの子を育てていた歴史的背景を語り、「私たちは家とはあまりうまくいってない人も多いから、代わりハウスに新しいマザーを作ったという背景もあって、(タイトルにもある)”マザー”というのは深い言葉なんです」と解説した。

作品のテーマの1つであるドラァグクイーンと母親の関係性については、それぞれが自身の母親とのエピソードや思いを披露。「一番最初に女装をしたのも母親のメイク道具だった」というベビーヴァギーは、「今は、こんな風に認めてくれて、応援もしてくれているんですけど、やっぱり(映画の)母親と同じように葛藤はあったのは間違いなくて、母親にカミングアウトした次の次の日くらいに、”ゲイ入門”みたいな本を枕元に置いているのを見て、母親のすごく固い脳をなるべく柔らかくして一生懸命学ぼうとしてくれているんだなと思いました」と振り返った。

最後は、本イベントを開催した別府ブルーバード劇場の館長である岡村照さんを、バブリーナが観客に紹介。「岡村照館長のような、私たちに対してすごく理解してくれるマザーがいるから私たちはこうして舞台に立てている。本当に照さんは、私たちにとってのマザーだと思う」と感謝を述べた。

「ステージマザー」は、テキサスに住むごく普通の主婦だったメイベリンが、ドラァグクイーンだった息⼦の死によって、息子が経営していたゲイバーを相続することになる物語。息⼦が⽣きているときにはわかり合えなかった後悔をバネに、息子が⾃分らしく⽣きた街で、メイベリンもまた⾃分らしさや⽣きることを⾒つめ直す。メイベリンを演じているのは、「世界にひとつのプレイブック」などのジャッキー・ウィーヴァー。「チャーリーズ・エンジェル」シリーズなどのルーシー・リューらが共演している。

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