安くない野球道具、諦める子どもも… ポニーが掲げた「野球用品給付支援策」

小中学生の野球人口減少が叫ばれる中、「ポニー」では画期的な取り組みを行っている

経済的理由で野球を諦める子どもをサポート

少年野球界に新たな変革の波を起こしている日本ポニーベースボール協会(以下、ポニー)。2019年に発表された「SUPER PONY ACTION パート1」では、試合と練習双方での投球数限度を決めたり、国際標準バットを導入したり、子どもたちを故障から守るための土台作りに努めた。

2020年12月に発表された「SUPER PONY ACTION パート2」では、スポーツ庁が掲げる「スポーツSDGs」を参考に、さらに一歩踏み込んだ「子どもたちが野球に打ち込める環境作り」に着目。スポーツを通じたSDGsの認知向上、スポーツが社会に提供できる価値のさらなる向上を目指し、5つの主な取り組みを掲げた。

そのうちの1つが「大倉グループ プレゼンツ『ポニーファミリー サプライ用品給付制度』」の制定だ。

そもそも、野球はバットやグラブ、ボールなどの道具を必要とするスポーツだ。道具が必要というハードルが、世界的に野球の普及が遅れている原因の1つだとされている。

近年、子どもたちの野球離れが指摘される日本でも、練習時間が長いこと、指導者が厳しいことなどに加え、用具代が高価なこともまた、理由の1つに挙がるという。保護者の経済的負担が理由となり、子どもが野球に興味を持っていても始められないケースもある。

実際に、中学生用の硬式野球用品の値段を見てみると、バットは平均2万円前後で3万円を超えるものもある。グラブは平均2~3万円で、高価なものとなれば5万円、6万円というものも。その他、スパイク、ユニホーム、会費、遠征費など、決して安い費用とは言えない。

さらに、昨年から続くコロナ禍により世界的に経済が落ち込む中、収入が減少した家庭も多く、子どもの野球にお金をかける余裕がなくなるケースも。保護者の事情で野球を諦めなければならない子どもが現れる可能性も考えられる。

株式会社大倉とSSKが経済的困難な家庭を支援、バットとグラブが給付される引換券を贈呈

そこでポニーが立ち上がった。2021年度からスポンサーとなる株式会社大倉の協力の下、一定条件を満たす家庭に野球用品の給付支援を行うことにした。この施策が生まれた背景について、昨年12月の「SUPER PONY ACTION パート2」発表会見で、ポニーの那須勇元事務総長は次のように語っている。

「コロナ禍でさらに経済が大変な状況になるであろうと予測される。ただ、子どもたちが野球を好きなんだったら、めいっぱい野球を楽しんでもらいたい。野球が好きな子どもたちはポニーに集まってほしいという考えが基盤。障壁があるならば取り除き、野球をするサポートをしていきたいという考えです」

協会の指導理念にもある「選手は親から、学校、教師から預かった大切な宝物」という考えに基づき、子どもたちが野球を始める環境、野球を続ける環境を守っていきたいという願いが込められた施策。このサポートを受けられる対象となるのは、下記のいずれかにあてはまる家庭となる。

1.世帯収入が400万円以下の者(独立行政法人・日本学生支援機構の給付型奨学金制度に定める家庭基準を参考)
2.障害者等級1級、または要介護者が同一世帯に居住する者

対象者は毎年度2月末日(新1年生は5月末日締切)までに証明者を提出すれば、協賛社でもあるSSKの野球用品引換券が贈呈され、スパイクとグラブが給付されることになる。また、対象者が日本代表に選ばれた場合は、別途ユニホーム等の購入品も贈呈されるという。協会では年間600万円の予算を組んだが、予算を超えた場合でも対応できるバックアッププランも用意されている。

協会が先頭に立ち、子どもたちが家庭の経済状況に左右されず、野球に熱中できる環境作りを行う。実際に野球用品を支給するという踏み込んだアクションを起こしたことは、子どもたちの野球離れという問題を、ポニーがいかに真剣に受け止めているかの現れとも言えそうだ。

(次回は2月26日を予定)(Full-Count編集部)

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