定年後、妻が倒れ借金が発覚「今後やりくりしていけるのか心配」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、61歳、再雇用で勤務中の男性。昨年妻が病気で倒れ、家計を引き継いだものの、借金が発覚し、家計を運営していく自信をなくされています。相談者の今後は大丈夫でしょうか? FPの氏家祥美氏がお答えします。

貯金がほぼ無い中での生活が不安です。

60歳で定年を迎え、再雇用で勤務中です(最大65歳まで)。昨年妻が病気で倒れ、妻に任せていた家計を当方が引き受ける事になりましたが、かなりの借金があることが発覚し、貯蓄から返済しているところです。今後やりくりしていけるのかとても心配です。

妻は高齢者施設に入っており、そちらへの支払いが月13〜14万程ある状態です。よって今妻が受給している障害年金を充てています。私の月収のみでは赤字のため、ボーナスから補填している状態です。住宅ローンの繰上返済は、銀行がどこか分からないため難しいと思っています。

また不定期な支出として、妻が施設ではなく入院することもあり、その場合は障害年金では足りないため、本人の貯蓄から出しています。私は働けるだけ働くべきだと思いますが、一方で職場が移転することになり、2022年から車通勤(片道1時間20分)になる予定です。今まで自転車通勤だったので今更車で通勤出来るのかという不安や、しかし退職すると家計が厳しくなるし……、と悩みは尽きません。私の体調に問題はありませんが、高血圧等はあります。

長くなりましたが、今後の方針をご教示いただきたく、何卒よろしくお願いいたします。

【相談者プロフィール】

・男性、61歳、会社員、既婚

・家族について:

妻:60歳・別居(障がい者のため施設に入居、障害年金受給中で月13万円)

長女:29歳・別居・会社員(月収15万円)

次女:26歳・別居・派遣社員(月収15万円)

・住居の形態:持ち家(戸建て)

・毎月の世帯の手取り金額:34万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:150万円

・毎月の世帯の支出の目安:24万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万円

・食費:3万円

・水道光熱費:2万3,000円

・保険料:1万1,000円(夫医療保険8,000円、妻県民共済の医療保険3,000円)

・通信費:8,000円

・車両費:2万7,000円(ローン1万7,000円、駐車場7,000円、ガソリン3,000円)

※ローンは2021年8月に17万を一括返済して終了予定

・お小遣い:3万円

・その他:日用品・雑費6,000円、ペット3,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:0円

・ボーナスからの年間貯蓄額:70万円

・現在の貯蓄総額:150万円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:

住宅ローン残債不明(月7万、ボーナスで年70万返済、残り6年)

妻奨学金100万、りそな銀行ローン月1万(残債25万程度)

楽天銀行ローン月3,000円(残債不明)

JACCSカードローン月2万(残債30万)

妻の奨学金月1万を2021年5月から返済予定(総額100万、利子は増えない)

・老後資金:公的年金額不明(厚生年金に35年程加入)、退職金3,000万


氏家:こんにちは。ご相談ありがとうございます。昨年奥さまが病気で倒れたのをきっかけに家計を見るようになったところ、複数の借金があるとわかって不安を感じているのですね。今後、奥さまの治療費もかかりますし、何かと不安だと思いますが、なんとか家計を整理して将来の見通しを一緒に立てていきましょう。

家のあちこちからローンに関する書類を探して

いろいろ大変な状況が重なっていますが、第一の問題点は、「借金の詳細が見えていないこと」ではないでしょうか。

例えば、住宅ローンに関しては、「住宅ローンの繰上げ返済は、銀行がどこか分からないため難しいと思っています」という状況ですし、楽天銀行のローンは月額3,000円の返済ですが「残債不明」。こうした不透明なものがあるために、不安感が増している状況だと思います。

まずは、家のあちこちからお金関係の書類を集めて、手掛かりになりそうなものを探してみましょう。住宅ローンやカードローンの残高に関するお知らせが郵送で届いていませんか? 契約時の記録がどこかにファイリングされていないでしょうか。書類が無ければ、奥さまのパソコンやスマートフォンなどにも何か記録が残っているかもしれません。まずは手がかりを探してみましょう。

手がかりが見つかったら、借入先の金融機関に問い合わせて現在の状況を伝えて、残債を知って繰り上げ返済をしたい旨を伝えてみましょう。本人からの委任状が無いと難しいなど、条件はあるかもしれませんが、必要な手続きを教えてもらいましょう。

いくつものローン、総返済額の目途を立てる

とはいえ、お金周りの書類が見つからない、代理人による繰り上げ返済はできないなど、思うように進まないかもしれません。ここからは、借金がそのままだった場合を想定して、話を進めていきます。

最初に、概算でいいので借金の総額を把握していきましょう。記入していただいた負債は以下の通りです。

(1) 住宅ローン残債不明(月7万、ボーナス70万で残り6年)
→概算では、(月7万円×12カ月+70万円)×6年=924万円
(2)妻奨学金100万円
(3)りそな銀行ローン月1万(残債25万円程度)
(4)楽天銀行ローン月3,000円(残債不明)
→3,000円×12カ月×3年=10万8,000円
(5)JACCSカードローン月2万(残債30万円)

(1)については、単純計算でざっくり概算すると、924万円となりました。(4)については残債が分からないので、仮で期間を3年と設定してみました。これらの条件を元に、(1)から(5)をすべて合計すると、負債の合計額は1,089万8,000円となりました。

このうち、(1)の住宅ローンは毎月の生活費から払っています。現在61歳で住宅ローン返済はあと6年。4年後の65歳で仕事を辞めるとすると、リタイア時に2年分のローンが残ります。退職金から残り2年分を返済すれば、住宅ローンは終了します。(2) は奥さまの奨学金で金利の返済は不要ですね。奥さまの預貯金から毎月返済していくとして、ここでは考慮しないでおきます。(3)(4)(5)はいずれも金額的にそれほど大きくありません。65歳までの間に返済が終了します。

65歳までは今の仕事を続けて貯蓄を

続いて、現在の家計の状況を見ていきます。すでにお子さん2人は独立して家を出ているので、お子さんにかかる生活費はありません。奥さまは現在、障がいを負ったこともあり高齢者施設に入居しています。施設への支払いは月額13〜14万円ありますが、奥さまが障害年金を13万円受給しているため、施設への支払いにはその年金を充て、不足分がある時には奥さまの貯蓄から支払っています。

このように見ていくと、まずはシンプルに、ご相談者さん自身の収入や貯蓄で、ご自身の今後の暮らしが成り立つかどうかを考えて行けば良さそうです。

現在、ご相談者さんは再雇用契約で働いていて、手取り年収は558万円(月額34万円×12カ月+ボーナス150万円)とあります。それに対して、毎月の支出は24万円。書いていただいた内訳のうち、住居費からその他のペット費までの合計が20万8,000円になるので、それに「りそな銀行ローン」月1万円、「楽天銀行ローン」月3,000円、「JACCSカードローン」月2万円の返済をあわせて約24万円になると考えました。

すると、何か特別なことがない限り、現在の生活では34万円-24万円=10万円と、月に10万円の貯蓄ができ、ボーナスから住宅ローンを差し引いて80万円貯蓄できると考えられます。年間にすると、約200万円が貯蓄可能という計算になります。実際には想定外の支出などもあるかもしれませんが、いまのお仕事をしている期間は十分貯蓄ができると考えていいでしょう。

現在61歳、来年から勤務先が遠くなるといった不安はあるようですが、別の仕事を探すとなると、現在のような条件のお仕事はなかなか見つかりにくいと思われます。コロナ禍で離職者が増えていますし、ご相談者さんはすでに60歳を超えています。勤務地は近くても収入が低くなるとか、通勤は楽になっても身体を使う仕事になるなど、別のつらさが出てくる可能性が高いでしょう。

65歳まで今の仕事を続けながら今のペースで返済を続ければ、こまごましたローンの返済は終了し、退職金で住宅ローンを完済すればローンの支払いは無くなります。お仕事は続ける前提で考えてみることをお勧めします。

65歳以降、借金が終わって平穏な日々に

先ほど、住居費からペット費までの支出合計は月額20万8,000円でした。65歳以降、住宅ローン7万円と、自動車ローン1万7,000円が不要になれば、1カ月の生活費は12万1,000万円になります。厚生年金に35年加入しているということですから、この金額でしたら月々の年金収入から生活費を支払っていけるでしょう。

そう考えると、退職金3,000万円は、住宅ローンの返済以外、老後の日常生活費として当てにしなくて済みます。現在の貯蓄額は150万円とやや心細い状況ですが、今から貯蓄を増やしていけそうな目処も立っています。これらのお金は、住宅のメンテナンス費用や、奥さまの療養費用、ご自身の楽しみや、お子さんやお孫さんへの費用、ご自身のための医療や介護への備えに充てられそうです。

奥さまの療養にいくつもの借金と、いろいろ大変な状況だとは思いますが、まずは65歳までいまの暮らしを続けることを目標としてください。あと数年、現在の暮らしを維持すれば、65歳以降、家計の面ではわりと穏やかな暮らしが手に入ると思っていいでしょう。

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