『あの頃。』夢中になれる何かを仲間と一緒に追いかけるキラキラ

(C)2020「あの頃。」製作委員会

 漫画家やバンドマンとして活躍している劔樹人の自伝的コミックエッセイ「あの頃。男子かしまし物語」を、『南瓜とマヨネーズ』の冨永昌敬が脚本、『愛がなんだ』の今泉力哉監督が実写化した映画。

 人生に希望を見出せなくなっていた青年・劔は、ある日偶然手にした松浦亜弥のミュージックビデオを観てアイドル「ハロー!プロジェクト」にハマってしまいます。それから、レコード屋店員ナカウチとの出会いをきっかけに、「ハロプロあべの支部」のメンバーになった劔。ハコ推しのイトウの家に夜な夜な集まっては個性豊かなハロプロファンのメンバーたちと語り合う日々が始まります。周りの人の目線なんて関係なく、大好きなハロプロに一直線。共通の<好き>を持った彼らの毎日は、とにかくキラキラ! いつまでも男子のままの彼らだけれど、気がつけば大好きなアイドルは卒業の道を選び大人になっていきます。そして仲間たちと過ごす日々から卒業して、新しい道を進み始める劔、仲間たちのその後にちょっぴり切なさを感じながら、大人の青春物語に胸がいっぱいになりました。

 劔を演じるのは、松坂桃李。近年は、ハードボイルドからシリアスなドラマまで幅広い役柄を演じている彼が、この映画ではアイドルが大好きな青年を好演。ハロプロを通じて友情を育む仲間たちを、仲野大賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人という今日本映画界で注目を浴びている俳優たちがとっても熱くて不器用なアイドルオタクたちを愛おしさたっぷりに演じています。

 何かに夢中になるって素晴らしい。アイドルでも、映画でも、俳優でもアニメでも、大好きなものを追いかける熱さは年齢なんて関係ない。かつての「あの頃」をセンチメンタルに振り返りながら、今からまた「あの頃」みたいな青春の日々を楽しみたい!と思わせてくれる映画です。★★★★☆(森田真帆)

2月19日から全国公開

監督:今泉力哉

出演:松坂桃李、仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人

© 一般社団法人共同通信社