『めぐみへの誓い』拉致問題をもう一度真剣に考えるきっかけに

(C)映画「めぐみへの誓い」製作委員会

 1977年、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの人生を中心に、拉致被害者たちの人生、そして彼らの帰宅を信じて待ち続ける家族たちの姿を描いた作品。劇団夜想会主宰の野伏翔が演出・脚本を手がけた舞台劇を、野伏監督自身がメガホンをとって映像化しました。

 ある日突然愛する人が目の前からいなくなり、居場所が明確に分かっているのに関わらず、会うことも、話すことも許されずにただ待ち続けるだけの家族たち。北朝鮮に連れてこられ、絶望と戦うことになった被害者の事実。監督は家族のみならず、元工作員にもインタビューをしたそうで、めぐみさんの拉致から洗脳、ついには精神病院に入院するシーンまでどれも生々しくて、心が本当に苦しかった。

 実は、横田めぐみさんを追ったドキュメンタリー『めぐみ 引き裂かれた家族の30年』が公開された2006年に横田滋さんご夫妻に取材する機会がありました。あれだけ大泣きしてしゃくりあげながら質問することになったインタビューは、今思い出しても後にも先にもなかったくらい辛い取材でした。この映画に出てくる通り、横田ご夫妻は本当に優しくて、善良の塊みたいな方々。本来であれば、娘さんと幸せで楽しい時間を過ごせたというのに。この映画にも登場しますが「お母さん! お母さん!」と拉致された船内で爪が剥がれるほどドアを引っ掻き続けたというめぐみさんの話をしながら、「かわいそうで、悲しくて」と29年が経ったその時も涙を流すお二人の姿に涙が止まらなくなったのを覚えています。「めぐみに会いたい」とむせび泣きながら話していた滋さんは昨年亡くなりました。私たちは今だからこそ、この国際問題に向き合わなければならない。そのきっかけになる映画だと思います。★★★★☆(森田真帆)

2月19日から全国順次公開

監督:野伏翔

出演:菜月、原田大二郎、石村とも子

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